1 自動車の騒音


  騒音は社会生活を営むうえに諸々の悪影響を及ぼすが,自動車数の増加に伴い,都市内における交通騒音が公害問題として大きくとりあげられるに至つた。
  自動車による騒音は,排気管,タイヤ,エンジン等から発する音により形成されているが,「昭和42年度交通騒音関係調査結果」(東京都首都整備局都市公害部43.1)は,近年における騒音レベル低下の傾向を指摘している。この原因としては,都心において高速道路があいついで完成したため交通量が一部の地域を除いて減少したこと,また,交通規制,車両の改善等により,騒音レベルの比較的低い乗用車の交通が中心となつたこと等が考えられる。
  交通騒音の低下対策としては,新型自動車について「道路運送車両法」に基づく「道路運送車両の保安基準」への適合性を審査する際,あらかじめ使用過程における騒音の増大を考慮し,現行保安基準に定められた数値(85ホン)を十分下まわる値となるよう指導するとともに,整備不良に起因する騒音の増大を防止するため,すべての自動車使用者に対し,定期点検整備を義務づけ,その結果が上記調査結果にみられる騒音レベル低下の一因として現われているものと思われる。
  しかしながら,最近,「道路運送車両法」の規定による自動車の検査を受けた後に,排気騒音を故意に増加させるような装置や消音性能を故意に低下させた消音器等を取り付け,あるいは保安基準に適合した装置をこの種に類似した構造に改造する等の違反行為が行なわれているので,43年9月にかかる行為を防止するよう自動車部品工業会等に対し強力に要請および指導を行なつた。
  なお,43年中の新型自動車の騒音は, 〔I−(II)−29表〕のように基準値をはるかに下回つた数値となつている。

  また,騒音問題解決のため,船舶技術研究所において,自動車の走行騒音の低下方法に関する研究,原動機騒音および排気騒音の防止対策の研究,騒音測定法および基準値の妥当性についての検討等規制の裏付けとなる試験研究を行なつている。


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