1 国際民間航空機関(ICAO)との関係
ICAOは昭和19年シカゴで制定された国際民間航空条約(シカゴ条約)に基づき成立した国際連合の一専門機関で,国際民間航空の安全で秩序ある発達および国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営を図ることを使命としており,世界の民間航空において大きな役割を果している。
わが国は28年10月ICAOの第61番目の加盟国となつたが,44年5月現在で加盟国は116カ国に達している。なお,ソ連は加盟していないが主な会議にはオブザーバーを出席させており,その加盟が期待されている。
わが国は,31年はじめて理事国となり,以後3年ごとに行なわれる理事国選挙で引き続き理事国として選出されている。昨年アルゼンチンで開催された第16回総会では,航空運送において最も重要な国を代表する理事国にはじめて選出された。
さらに,理事会の補佐機関である航空委員会にも34年以来委員を送つている。
上記理事会および航空委員会は常時開催されているが,専門的な問題の検討には随時専門部会等の会議が開催されており,過去1年間にわが国は次の会議に参加した。
(1) 第16回ICAO総会昭和43年9月3日から26日まで,アルゼンチンのブエノスアイレスで開催され,理事国の改選44年から3年間の予算の決定等が行なわれた。
理事国選挙については,わが国は昭和31年以来,パートII(国際民間航空のための施設の設置に最大の貢献をする国)の理事国として引き続き4期選出されて来たが,近年のわが国民間航空の飛躍的な発展に鑑み,パートI(航空運送において最も重要な国)の理事国として立候補し最高点で当選した。
また,44〜46年の3年間の同機関の予算と加盟国の分担率が決定されたが,わが国の44年度の分担率は3.39%で第7位,45年度は3.73%で第6位,46年度は4.10%で第5位となつている。
なお,航空運送の急激な発展および大型機,超音速機の導入に伴い生ずるあらゆる問題についても討議が行なわれ,多くの勧告が行なわれた。
(2) 第6回航空会議本会議は主として航空路における運航の安全性と効率の向上のため,シカゴ条約附属書等の諸規定の改正を目的として,44年4月19日から5月3日までカナダのモントリオールで開催された。この会議では航空機間の間隔,有視界飛行の管制,空域の編成,空地通信,SSRの適用等について討議を行ない付属書等の規定の大幅な改定案を作成した。
(3) 中東・東南アジア地域航空会議43年11月19日から12月13日までフィリピンのマニラで開催された。地域会議は当該地域の特殊事情に応じた国際航空問題を具体的に処理するために開かれるものである。今回は超大型機および超音速機の就航に対処するために飛行場,無線航行援助施設,航空交通業務等に関する地域計画および地域補足手続の再検討を行ない,かつ,今後5カ年間に予想される民間航空機の国際飛行に必要な施設および業務を定め,手続を設定した。
(4) 法律小委員会ワルソー条約改正に関する法律小委員会は,43年11月18日から29日までモントリオールで開催され,航空運送人の責任に関して,ワルソー条約のもつ基本的な概念とは異なる高額な責任限度額の設定および絶対責任原理の導入という問題につき,実質的な検討を行なつた。なお,最終的な条約改正案は45年3月の本会議において作成される予定である。
また・ハイジャッキング(航空機に対する不法強奪行為)に関する法律小委員会は,44年2月10日から22日までモントリオールで開催され,ハイジャッキングを防止する方策を検討した。航空機上で行なわれた犯罪その他の行為に関しては38年に採択された東京条約があるが,最近,航空の安全に多大の脅威を与えているハイジャッキングの防止の面では法律上の不備もあり,あまり効果がない。したがつて特別の条約の必要性が強く要望され,本小委員会の開催に至つたものである。なお,本件に関しては44年9月にさらに審議されることとなつている。
(5) その他その他,わが国から代表を派遣した会議としては宇宙技術の国際民間航空への利用を研究する宇宙技術パネル,超音速航空機の運航に関するあらゆる要件を検討するSSTパネル,北大西洋定点観測船の運営上の技術的問題,運営費および新船建造計画等の検討を行なう北大西洋定点観測船欧州諮問委員会などがあつた。
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