第1節 社会開発と運輸


  30年以降わが国の経済は,めざましい高度成長をつづけ,国民総生産でみると自由世界第2位という水準に達した。また,この間に国民所得は上昇し,消費生活水準も向上した。しかし,自然の無秩序な破壊,国土利用の偏在化による過密過疎問題を生じ,また社会環境整備の遅れから種々の公害,交通災害等社会的緊張を生じている。これらのいわゆる経済成長のひずみと称される諸問題は,国民生活環境の悪化のみならず,今後の経済成長を阻害する要因にもなりかねない。
  社会資本のうちに重要な地位を占める交通関係社会資本の蓄積状況についてみると,経済活動の活発化に呼応して急激に伸びる輸送活動に対して,交通関係社会資本ストツクの伸びは相対的に低い水準にあり,これが原因となって,輸送部門での種々の外部不経済あるいはサービス水準の低下を呼び起している。44年度についても 〔1−3−1図〕に示すように,道路交通事故,交通渋滞,港湾におけるバース待ち現象,空港の混雑等は依然としてほとんど好転のきざしをみせていない。

  経済発展を将来にわたつて持続し,また国民生活環境の向上をはかるためには,国土の総合的,長期的展望にもとづく開発計画により,経済発展の基盤を確立するとともに,経済の成長と変化に即応して社会資本の整備,充実を行なわなければならない。
  45年4月に策定された「新経済社会発展計画」(計画期間昭和45年〜50年)においては,基本目標として,国際社会とのより積極的な協調のもとでの将来にわたる経済発展の基盤の確立,わが国経済の高度成長と変化への適応力と豊かな国民生活実現のための社会的基盤の確立をあげている。
  さらに,44年5月に策定された「新全国総合開発計画」は,国土開発の可能性を全国に拡大し,大都市における社会資本の整備・都市機能の再編成等,また過疎地域については産業開発・観光開発を推進し過密過疎問題を解決するとともに将来のわが国の全国的,有機的な発展を計画している。
  現在の国際化し,また高度に分化された経済社会においては,輸送活動は経済活動の必要不可欠な要素であり,経済成長に呼応して必然的に増大するものであるが,さらに輸送活動自体が経済活動を活発化する経済開発効果を持つことも無視できない。
  このため,「新全国総合開発計画」においては,交通,通信の全国的なネツトワークを形成して,これの経済活動に対する先導的性格により,国土開発の可能性を全国に拡大することを骨格としている。すなわち,ジエット航空機,新幹線鉄道,高速道路,高速コンテナ船等を駆使して,高速交通体系を編成しようとするものである。
  そして,これに基づきすでに,全国新幹線鉄道網,国土開発幹線自動車道網の計画が具体化しており,空港の整備も進められている。
  また,港湾も交通体系の一環として,あるいは地域開発の拠点として開発が進められており,茨城県の鹿島にはすでに大型港湾が建設されるとともに一大臨海工業地帯が出現しようとしている。このほか,陸奥湾,周防灘地帯についても同様の構想が練られている。
  このように,国土開発,経済の発展および国民生活環境の向上のために,運輸関係施設の整備は欠くことができないものであり,長期的計画にもとづいた,先行的整備がなされなければならない。
  このため,各輸送機関の特性を十分に活用し,国土の開発計画に即した総合的有機的な輸送体系を策定し,これをもととして海陸空を通じた総合的な交通政策,効率的な交通関係社会資本投資を行なうための方策を検討するため,従来運輸大臣の私的諮問機関として運輸政策懇談会が設けられていたが,45年6月運輸大臣の正式の諾問機関として,運輸政策審議会が発足した。
  一方,経済社会の発展に伴い今後も増大し,多様化するであろう輸送需要に対応し,これを吸収していくための輸送技術の重要性もみのがすことはできない。このため,運輸関係技術の研究開発を総合的,有機的に進め,経済社会の要求する技術のみならず,積極的に技術開発テーマを選定して,経済活動を先導してゆくための方策を確立するため,従来運輸大臣の私的諮問機関として,運輸技術懇談会が設けられていたが,45年7月運輸大臣の正式の諮問機関として運輸技術審議会が発足した。


表紙へ戻る 目次へ戻る