1 列車運転管理システム


  輸送の安全確保は,輸送機関の基本的使命であり,一本の列車の運転についてみても適正な列車ダイヤの作成に始まつて,車両,線路,電気系統など施設の安全の確認等,多くの配慮が必要である。ことに,列車運転の神経ともいうべき信号系統,運行指令など運行情報の迅速かつ正確な伝達・処理は,その中枢をなすものであるともいえよう。 鉄道においては,その創設以来,列車の運転に当つては,駅務員や運転士などの人間的能力を前提として運転の安全が考えられてきたが,近年輸送需要増にともなう列車の増発・稠密運転,列車の高速化にともなつて,人間の能力に頼りつつ安全な運転を確保することは限界に近づきつつあり,ATC(Automatic Train Control――自動列車制御装置)の導入により一部自動化したり,列車の運転状況,信号系統,電力系統等の情報を1ヵ所で集中的に監視し,運行の指令を行なうCTC(CentraIized Traffic Control)の開発が行なわれる一方,列車ダイヤの作成に始まる運転管理の総合的システム化(OPERUN――Operation Plan-ning&Execution System for Railway Unifed Network)が進められている。

(1) 運転管理システム(OPERUN)

  本システムは,列車基本計画システム(ダイヤの自動作成等),要員,車両基本計画システム(乗務員・車両の運用計画の作成),運転計画伝達システム(運転実施計画の伝達の正確化と迅速化を図る),列車運転システム(進路の制御等,自動運転を考えたシステム)など,多岐,広範囲にわたるものである。このため,まず緊急度の高い運転計画伝達システムから43年度以降開発を進め,45年度中に試験段階に入り,47年度より実用化されることとなつている。

(2) 自動列車制御装置(ATC)

  新幹線は最高時速210kmの高速運転であるため,運転士が在来線のように平均1kmごとに設置されている地上の信号機をいちいち確認して運転することが非常に困難である。
  そこで,信号の確認および速度の制御をATC装置を使用して自動的に行なわせることにより,安全度の向上をはかつている。
  すなわち,約3km間隔に軌条を区分して1運転区間とし,この区間には1箇列車より多くの列車を進入させないよう自動的に後続列車を停止させ,先行列車に近づいたとき,急曲線を通過するとき,あるいは駅構内にあるポイントを通過するときは,要求される制限速度以上にならないよう自動的に速度が低下する仕組みとなつている。

(3) 列車集中制御装置(CTC)

  CTCは初期においては単線区間の運行の安全,省力化を中心として導入され,この適用区間は伊東線をはじめとして860余キロ(新幹線を除く)に及んでいる。しかし,ATCとともにCTCの機能がフルに生かされているのは東海道新幹線においてである。新幹線は,全線515kmの間に常時数十本の列車が高速かつ高密度で運転されており,これらの列車群を能率的に,また安全に運転調整を行なう必要があるわけである。
  東京駅八重州側の総合指令所( 〔2−2−9図〕)は,運転に関する情報の中枢である。ここには列車運転の表示盤があり,列車の現在位置,列車番号,本線進路の開通状態,風速警報などが示されている。

  表示盤の手前には,信号設備の制御盤があり,全駅のポイントや信号機はすべてこの制御盤にあるてこで遠隔制御される。
  また,列車無線,沿線電話等の連絡設備があつて,自由に運転士または必要な職員との連絡ができ,必要な場合もしくは非常の場合等に,適切な連絡および処置を指示命令することができる。
  現在,国鉄では新幹線の大阪から西への延伸にともない,CTCシステムも複雑化してくるので,指令員が現密行なつている操作を全てコンピューターで行わせるべく,山陽新幹線岡山開通の昭和47年を第1段階として,博多開通の50年を最終自標に,コムトラツク・システム(COMTRAC-Computer aided TrafficControl)を開発中である。
  私鉄各社においても,CTCの導入が検討され,実際に導入済のところも数社ある。システムとしては,国鉄の新幹線システムの小規模なものといえるが,列車運行の監視,運行の記録,対列車・駅務室への連絡指令のほか,各駅の行先案内表示板の入れかえ,旅客案内アナウンスなども自動遠隔制御を行なつているのが特色である。


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