2 サービス改善対策の推進


  このような状況に対処するため,運輸省では昭和44年6月に「大都市におけるタクシーサービスの改善対策」を策定し,逐次その実施を図つてきている。

(1) タクシー近代化センターの設立とタクシー業務適正化臨時措置法の制定

  悪質運転者の排除と,良質運転者の確保策を総合的に実施する中核機関として東京,大阪に昭和44年12月財団法人「タクシー近代化センターを設立した。「タクシー近代化センター」においては第63回国会において制定された「タクシー業務適正化臨時措置法」に基づく次のような諸措置の円滑な実施を図ることとしている。

 イ,法人タクシー運転者の登録

      法人タクシー運転者の登録を実施し,東京,大阪のタクシーには登録した運転者以外の者を乗務させてはならないこととする。

 ロ,タクシー業務適正化事業

      苦情処理,運転者の研修,街頭指導,タクシー乗場の設置運営等を行なうこととし,これらの業務に必要な経費を関係タクシー事業者から負担金として徴収する。なおタクシー近代化センターに対しては,安全研修施設の補助金として本年度予算5,000万円を計上し,その事業の推進を援助することとしている。また,この法律には,タクシー近代化センターに行なわせる業務以外に,その実効を確保するため,違反事業者等に対する行政処分や繁華街等におけるタクシー乗場以外での乗車の禁止等の特別規制についても規定しており,45年7月にはこの法律の実施に必要な政令,省令も公布され,45年11月からこの法律の規定は全面的に適用される運びとなる。

(2) タクシー運転者の労働条件の改善

  良質な運転者を確保するためには労働条件の改善を図ることが急務であるので,今回の大都市のタクシー運賃の改訂に際しては保障給部分の引上げ,労働時間の適正化を内容とする労働省通達(42年2月9日)の実施状況を確認の上認可を行なう等その実効を期した。また労働条件については今後とも労働関係機関と連絡を保ちつつ十分監視し,悪質なものに対しては行政指導等により改善を図ることとする。

(3) タクシー運賃の適正化

  現行のタクシー運賃体系は大都市の実情にそぐわない面があるので,今回の運賃改訂に当たって,(イ),混雑地域への乗入拒否の防止策とするため時間距離併用メーターを採用した。(ロ),深夜早朝の輸送力の増強を図るため深夜早朝割増料金の設定を実施した。

(4) タクシー需要の調整

  タクシーの需給のアンバランスは,本来公共大量輸送機関の分野であると思われる交通需要までがタクシーに集中していることも原因の一つとなつているので,乗合バスの路線の再編成,優先通行の確保,深夜バスの運行,都市交通機関の運賃のバランスの適正化等によって公共輸送機関間の輸送分野を確定する必要がある。

(5) タクシーの輸送力の増強

  需要に即応して随時増車,個人タクシーの免許の促進を行ない輸送力を増強することに努めており,このための行政事務処理の簡素化も推進している。

(6) 企業の統合,協業化の推進

  大規模化による経営の合理化,近代化を図るとともにブランドに対する利用者の選択を可能ならしめるため企業の統合,協業化を促進する。

(7) タクシー利用形態の改善

  無線タクシーについては,需要に適確に応じうること,運転者の状況が把握できること等の長所があるので,今後ともその拡充強化を図る方針である。


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