3 離島航路の現状と問題点
わが国は,本州,北海道,'四国,九州のほか3,600余の小島しよからなりたつている。離島航路は,「離島振興法」に基づき指定された離島振興対策実施地域(対象島しよ数845のうち有人島340,44年4月1日現在対象人口112万人)にかかる航路およびこれに準ずるいわば陸の孤島ともいうべき地域を結ぶ航路をいい, 〔II−(I)−29表〕のように44年8月1日現在,旅客定期航路999航路のうち,53%に当る533航路の多きを数えている。
離島は,一般にみるべき産業もなく,本土に比較して所得水準が低いため年々人口が減少しつつあり,一部の観光資源に恵まれたものを除き,旅客需要が横ばいないし減少の傾向をたどり,住民の運賃負担力にも限界がある。また,気象,海象条件の悪い外海の航路では,輸送の安全を確保し欠航率を減少させるために需要量に比べて大型の船舶を必要とし,一般の航路事業よりも輸送コストが高くならざるをえない。このように離島航路は,収入,支出の両面で厳しい環境下におかれ,航路の維持が困難となつているものが多いが離島住民の生活の安定と福祉の向上を図るためには,船路の確保が必須条件であり,生活水準の向上に伴いサービスの改善も図る必要がある。
このため,離島航路に対する国の助成は古くから行なわれているが,41年度からは,従来の「航路を維持するための助成」から脱皮し,「航路の改善整備のための助成」へと制度の大幅な改正を行なつた。
すなわち,航路補助金について海運造船合理化審議会の答申(40年10月27日「離島航路整備のための方策について」)に基づき@それぞれの航路の使用船舶,運航回数をもとにして標準的な経営を行なう場合の基準欠損額を算定し,これと実績欠損額とのいずれか低い額の75%(集約事業者の場合は80%)を補助金として交付する,A全事業で利益を生じ,資本金の8%相当額を超える配当をしている者に対しては補助金を交付せず,また全事業における利益が全事業の事業用固定資産の3%をこえるときは補助金をその分だけ減額する,B多くの事業者が同一あるいは併行して航路を経営している場合,これを集約して事業者が行なうこととした場合補助金の交付率を80%とする(通常は75%),C事業者に離島航路整備計画として,将来にわたる航路の維持改善に関する計画を提出させ,これに対して都道府県知事等の意見を反映させることとした。
ここ数年来の補助金の交付状況は, 〔II−(I)−30表〕のとおりであつて,とくに41年度からは助成制度の改善により補助金は飛躍的に増加した。44年度には49事業者57航路に対し,2億5,915万円の補助金を交付し,45年度予算では56事業者66航路に対し,3億2,290万円の補助を行なうこととなつている。また,船舶整備のために船舶整備公団に確保された資金額も40年度の2億円から44年度の6億円へと増額をみ,45年度予算では8億円になつている。
補助金交付航路の収支状況を43年度と44年度に交付を受けた42事業者49航路についてみると 〔II−(I)−31表〕のとおりであつて,収支率は64.7%から63.6%へと悪化している。収入では44年度は43年度に比べて7.3%の伸びを示し,42年度から43年度に至る伸び率9.3%に比べると低位にとどまつている。一方,経費についてみると,44年度は43年度に比べて9.2%の増加を示し,中でも船員費の伸びは17.8%と著しい。船員費は年々の船員給与のベースアツプと船型の大型化および運航回数増に伴う船員数増によるものがその原因であり,店費増は随員の人件費のベースアツプ,運転資金借入額の増加に伴う支払利子の増加などがその主な理由と考えられる。
以上のように44年度においては,収入の伸び悩みに対し,費用がこれを上回つた増加を示しており,今後もこのような傾向が続くかぎり,離島航路の収支改善への道は依然として遠いものと思われる。
離島航路における老朽船の代替建造,船舶の大型化,運航回数の増加等は安全性の向上とサービスの改善に直結する問題として住民の強い要望であるとともに,事業者の願いでもある。また,離島内の道路整備が進むにつれて在来の航路をフエリー化する必要もある。しかしながら,赤字航路をかかえている事業者としてはその維持に精一杯であり,国および地方公共団体の助成により 〔II−(I)−32表〕のとおりわずかに航路の改善を図つている状態である。一方,全離島航路のうちには国の補助対象航路となつている66航路のほかに離島にとつて唯一の交通機関であるか他の交通機関によることが著しく困難と認められるものが多数あり,難島航路の維持改善について今後の助成制度の拡充力が強く望まれている。
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