1 優先使用方法


  我国の港湾取扱貨物量は,経済の高度成長を反映して毎年約20%程度の増加率を示し,昭和44年度は対前年比18.8%の増加となつている。このような港湾取扱貨物量の増大に対処するため,国および港湾管理者は毎年多額の資金を投下して港湾施設の整備拡充に努めているが,いまだ貨物量の伸びに追いつくまでには至つていない。これは 〔II−(III)−31図〕にみられるとおり,貨物量1トン当りの公共施設の資産額を示す港湾原単位が年々漸減傾向にあることからも明らかである。
  港湾施設の量的不定に対する抜本的解決は,港湾整備の拡充にまたなければならないが,それと同時に現状においては,加えて,既存施設の効率的使用を図ることによつて港湾需要の増大に対処することも考えなければならない。本来岸壁とその背後の上屋,荷さばき地等は有機的,一体的に運営されるべきものであるが,実際には岸壁を通らずはしけで揚げ積みしたり,岸壁を経由しても直背後の上屋を使用せず他の上屋へ運んだりすることが多く,荷役の非効率性が指摘されている。また,はしけ輸送に伴う,貨物の荷傷みや減失も無視できない。

  このような状態を改善するためには,従来の公共埠頭利用型態とは異なつた新しい利用形態を考えなければならない。公共埠頭の利用については,港湾法上何人に対しても不平等な取扱いをしてはならないと規定され,従来無差別,先着順の利用形態がとられて来た。しかし入港船舶や貨物量の増大とともに,従来の無秩序な利用形態に反省が加えられ,横浜港,神戸港等では,航路別または貨物別に埠頭を優先的に使用させる優先使用方法が採られている。この方法によつて荷役作業は能率化され,岸壁と上屋との一体的,有機的利用が可能となる。
  また,従来の港湾管理者が建設管理する公共埠頭とは別に公団に埠頭を建設管理させ,特定の船会社等に独占的に専用貸しさせる制度も行なわれている。


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