第4節 航空従事者の養成対策


  前述のとおり,航空従事者のうちで定期運送事業者の操縦士の養成は,著増する航空輸送需要を消化して,わが国の国際航空収益を保持するとともに国民の足を確保する上で,国家的課題であるが,これには莫大な経費と長い期間を要するために,国が積極的な施策を講ずる必要がある。
  これらの操縦士は 〔III−36図〕のとおり,年々増加傾向を示しているが,民間航空の発展に追いつけず,外人パイロツトの雇用により乗員不足の解消の一助としているのが現状で,すでに操縦士の数が隘路となつて輸送需要からみた適正な航空機の運航を確保できない状況を呈している。現在の定期運送業者の操縦士の養成は,前記のごとく航空大学校,防衛庁委託,防衛庁割愛,自社養成により行なわれているが,その規模は,航空大学校90名,防衛庁委託50名,防衛庁割愛約20名,自社養成約90名の総計250名に過ぎない。

  他方,輸送需要の伸びから将来の乗員を予測すると,昭和44年4月1日の1,270名に対し,昭和50年には約2,900名,55年度には約4,400名と見込まれ,前記の250名規模のままで養成を続けるとすれば,50年度には300名増,55年度には700名強の不定となるものと推定される。従つて養成規模を拡大して量的に十分な航空機乗組員を養成することが急務であるが,乗員の従来予測からすると,年間約360名の養成を要するものと考えられる。このため,次の施策を講ずる 〔III−37表〕

 (1) 航空大学校の養成数を90名から135名に引き上げる。
 (2) 定期航空運送事業者の行なつている自社養成の規模を拡大するよら指導し,現状規模の約90名から航空大学校の養成数と同数の135名とする。
 (3) 防衛庁への委託養成の数を50名から60名にするとともに防衛庁からの割愛の増大に努力して30名以上を確保する。
  航空大学校の養成規模の拡大については,昭和46年度入学者からとし,45年度予算で帯広分校の新設(学生数の増加に伴い,単発課程を宮崎のみでは実施できないため。)のための用地の購入および造成と宮崎本校の校舎,寄宿舎等の整備(学生数の増加に伴い,現在の施設では収容できないため。)を行なう。また,防衛庁の委託の増加については昭和45年度から行なう。
  しかし,航空機乗組員の養成には長期間を要するため,上述諸対策の効果は直ちに現われないので,当面の不定に対しては次のような方策によらなければならない。
 (1) 訓練期間の短い防衛庁からの割愛を極力増大する。
 (2) エア・バス等大型機の導入およびウエツト・チヤーターの拡充によつて航空機乗組員の節減を図る。


表紙へ戻る 目次へ戻る