総論
第1部 昭和45年度の運輸経済

  45年度のわが国経済は,44年9月の金融引締め措置が45年度に入っても持続されたものの,45年度前半は鉱工業生産の強い増勢により経済は速いテンポで拡大をつづけた。しかし,夏頃から鉱工業出荷の鈍化,製品在庫の増大により,後半は沈静化へと大きく転換した。このなかにあつて,年度前半までの長期好況により,年度後半やや落着き気味となつたが,賃金水準は高い上昇となり,また消費者物価も高い上昇を示した。
  このような景気の基調を反映し,国民総生産は前年度比,実質9.7%増と5年ぶりに10%をわずかに下回り,鉱工業生産指数も,13.5%増と前年度の伸びを下回つた。一方,個人消費支出は前年度比で名目16.0%,実質8.0%の伸びを示した。また,家計消費に占める教養,娯楽などサービス支出の比重は高まり,消費構造の高度化が進んでいる。
  45年度の国際貿易は,年度前半の国内経済の拡大による素原材料の輸入依存度の上昇,海外のインフレによる相対的国際競争力の強化を反映して輸出,輸入とも前年度に比べ20.6%,20.4%の高い伸びを示した。また,国際旅客の往来も,45年3号〜9月に大阪で開催された万国博覧会,わが国の世界経済における比重の高まり,個人所得の増大を反映して,わが国への来訪者,わが国の海外旅行者は前年に比べ40.4%,31.5%の高い伸びを示した。
  このような経済社会情勢のなかで,45年度の運輸経済は,年度前半の高い伸びにより,総合輸送活動指数は287.8となり,前年度比18.5%の増加と,年度をとおしては順調な伸びを示した。このうち,国内輸送活動は,貨物輸送が後半国内景気沈静化の影響により12.7%の伸びにとどまつたが,旅客輸送は万国博の開催等による長距離旅客の増大,自家用乗用車の増大により23.2%の伸びとなつた結果,18.1%の伸びとなつた。国際輸送活動は,貿易規模の拡大に対応した安定輸送力確保による外航船腹量の増強と国際航空の強化を反映し,24.8%の伸びを示したものの前年の伸びをやや下回つた。
  44年9年に開始された金融引締めの影響を前回調整期(42年9月)前々回調整期(39年3昼)と比較してみると 〔1−1−1図〕のように,景気動向は45年9月より,前々回と同様,下向きに転じている。その影響をうけ輸送活動は10月以降伸び率は鈍化した。