第2章 危機にたつ公共輸送

  経済社会の発展高度化に伴い輸送機関の利用量は年々増大し,その利用も多様化してきた。とくに近年,乗用車は急激に普及をしてきており,この10年間においても21倍に増大し45年度末で3.1世帯に1台の普及となつた。その普及の地域間格差は年をおつて減少し,普及率は 〔2−2−1図〕のとおり各地域とも平準化してきている。このような乗用車を中心とする自動車の普及・急増に対し道路整備がおいつかず 〔2−2−2図〕のように,東京,大阪の大都市では道路1km当り自動車普及台数は110台,130台に達し,これが大都市の路面交通を著しく渋滞させている。

  近年,急速に進展する都市化現象は旅客輸送に種々の問題を引き起こしている。大都市においては大量の旅客輸送需要,通勤・通学の長距離化,道路混雑等をもたらし,そのため鉄道の輸送力増強等設備投資の増大,バス,タクシーの交通渋滞による輸送効率の低下等を引き起こし,地方においては人口の減少に加えて自家用車の普及により,鉄道,バスの輸送需要の急激な減少を招く等公共輸送機能の維持が困難となつている。一方,利用客側からみても,都市における鉄道の慢性的混雑,バスの運行の不定時性,道路交通の渋滞,地方における鉄道,バス路線の減便あるいは廃止等輸送サービスの低下が生じている。


第1節 大都市の旅客輸送

第2節 地方の旅客輸送