第1章 海上労働力の現況

  商船や漁船などに乗り組んでいる船員には船長,機関長,航海士,機関士,船舶通信士といつた船舶職員法に基づいて海技従事者の免許を受けている「職員」と,これら職員の指揮を受ける「部員」とがあり,これらの船員全体に対して海の労働基準法である船員法が適用されている。その適用を受ける船員数は, 〔II−(II)−1表〕のとおり44年10月1日現在総数約28万9,000千人となつている。
  最近の有給休暇の増加と求人難から,各企業とも予備員を抱える必要がますます強くなつており,実際の予備員率も,43年の8.9から44年には10.0と若干の伸びを示している。予備員率は,汽船と漁船,外航船と内航船では異なるが,汽船と漁船でみると,汽船の16.5にくらべ漁船が24と大幅な開きがある。漁船の予備員率がこのように低いのは,漁船における要員確保の困難性と周年雇用制の普及がいぜんとしておくれていることを示している。

  1隻当りの乗組員数を5年前と比較してみたのが 〔II−(II)−2表〕であるが,総体的に減少傾向を示している。外航では船舶の近代化に伴つてかなりの減少をみせており,とくに1万トン以上の階層で減少が著しいが,これはこの階層の船舶がとくに自動化,専用船化が進んでいるためとみられる。

  内航では,比較的企業規模の大きい内航Aは,いわゆる一ぱい船主の多い内航Bに比べほとんどが労働組合の組織船員のため全般的に1隻当りの乗組員数が多い。また,内航AおよびBとも各階層で乗組員数が減少している。
  漁船では,比較的企業規模の大きい漁業Aは,一ぱい船主の多い漁業Bに比べ乗組員数が少なく,とくに100〜500トンの階層において顕著である。また外航,内航と同様漁船も乗組員数は次第に減少している。