第4節 全国新幹線鉄道の整備について


  国土の総合的かつ普遍的開発を図るべく,新幹線鉄道により高速で全国中核都市間を有機的かつ効率的に結ぶ新ネツトワークの形成を目的とし,45年5月全国新幹線鉄道整備法が制定された。この法律に基づき鉄道建設審議会の答申を得て46年4月1日東北新幹線(東京・盛岡間約500キロ),上越新幹線(東京・新潟盟約300キロ)成田新幹線(東京・成田間約70キロ)の整備計画を決定し,同日,東北新幹線については日本亀有鉄道に,上越新幹線,成田新幹線については日本鉄道建設公団にそれぞれ建設指示を行なつた。これら3線についての具体的計画については,現在,国鉄,公団で検討中であるが,建設規格としては東海道新幹線と同様電車運転方式とし,最高設計速度についてはさらにスピードアツプを行ない,260km/hを考えているので,完成の暁には,東京・盛岡間の6時間が2時間30分に,東京・新潟間の3時間50分が1時間30分に,また東京・成田間の1時間が30分にそれぞれ大輻に短縮されることとなる。なお,3線の建設費の合計は約1兆6,000億円が見込まれており,工期は建設資金が順調に確保された場合,技術的にはおおむね5年程度で各線とも完成するものと考えられる。
  新幹線鉄道は,全国新幹線鉄道整備法に基づき,現在建設中のものも含めて今後さらに整備が促進されるものと思われるが,その際における若干の問題点としては次のとおりである。
  その第1は,新幹線鉄道建設の財源の問題である。東北,上越,成田の3新幹線の建設だけで約1兆6,000億の資金が必要とされるが,このぼう大な資金を全額借入金等外部資金によることは開業後の収支について資本費の負担が大きく,大きな赤字が生ずるので,46年度予算においてはさし当り建設費75億円のうち30億円を一般会計からの出資により,45億円を財政投融資等によることとしたが,47年度以降の資金調達および助成措置については,総合交通体系の中における新幹線鉄道の位置づけと関連して検討しているところである。
  第2は,技術開発の問題である。新幹線鉄道による高速輸送は東海道新幹線においては,最高速度210km/hで運行されているが,現在建設を計画している3線はそれを上回る260km/hを予定しており,ことに多雪地帯の降積雪時においてその高速安定性をいかに確保するかの問題がある。耐寒耐雪車両構造,電車線路着氷雪対策,その他必要な事項に関して広範な研究,技術開発等を今後よりいつそう進める必要がある。また,今後の課題として現在の新幹線よりもさらに高速の鉄道の技術開発の問題がある。従来から日本国有鉄道で将来の新幹線鉄道用車両として400km/h程度を目標に磁力により浮上し駆動するリニアモーターカーについて基礎的な技術的研究を進めているが,運輸省としてもこれに対処するため,経済性の問題技術上の可能性,開発体制の問題等について運輸技術審議会を通じて種々検討を進めてきたところであるが,今後の方針としては,国が基本的計画を作成し開発に必要な経費について十分な予算上の配慮を払うこととし,研究開発体制としては,日本国有鉄道が中心となつて技術開発実用化等について推進すべきものとの結論に達している。なお,この超高速車両を新幹線のどこの線区に採用するかは,その実用化の見通しが立つた段階で輸送需要,経済性等を十分勘案して決定されるが,一応現在のところ輸送需要等の点からみて東海道第2新幹線などが可能性の多い箇所と考えられる。
  第3としては,騒音等の問題がある。東海道新幹線の列車運行に伴う騒音防止対策として,計画当初から軌道関係ではロングレールの採用,ゴム製振動吸収パツトを使用した弾性締結装置の使用,車両関係では空気バネをとり入れた新機構台車の開発,しや音効果を図つたスカートの取付けなど,また,必要かつ設備可能な箇所には防音壁を総延長約104キロにわたり線路沿いに設置するなどして騒音防止対策を講じてきたが,相変わらず沿線住民の騒音等に関する苦情が絶えないところである。新幹線のように高速で走行する鉄道騒音を防止することは現在の鉄道運転方式においてはきわめて困難であるが,山陽新幹線建設に際しては,東海道新幹線の騒音対策を生かし,市街地における鉄けた橋の防音工事,必要な箇所での防音壁の設置,車両軌道構造の改良等現在の技術レベルにおいて可能な限りの騒音軽減対策を行なつているが,さらに騒音防止の研究を進め,より効果的な対策の確立を図る必要がある。

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