1 技術開発の動向
(1) 大型超高速コンテナ船の開発
1960年代に入つて登場したコンテナ船は,世界貿易の進展にともなつて,大型化,高速化の一途をたどつている。わが国においても,航海速力26ノツト,コンテナ積載能力約1,850個のコンテナ船5隻が欧州航路用として,目下建造中であり,47年5月までにすべて就航する予定である。また,アメリカのシーランド社は,コンテナ積載能力35フイート型コンテナ1,085個(20フイート型コンテナ換算約2,200個),航海速力30ノツトの高速コンテナ船を8隻発注している。また,コンテナ船に搭載する主機関についても,米国の船主は航空用ジエツト機関転用型ガスタービンを主機関とする航海速力26ノツト,コンテナ積載能力1,686個のコンテナ船を4隻建造して注目されるなど,新たな見地からの検討が行なわれている。
このような情勢にかんがみ,運輸技術審議会は,コンテナ積載能力3,000個,航海速力35ノツトの大型超高速コンテナ船を対象として,今後5カ年を目途に先行的な開発を推進すべきであるとの答申をしており,この方針に従つて47年度以降,船型およびプロペラの研究開発,主機関関係等の開発が組織的に進められることとなつている。
なお,大型超高速船用の主機関として,シリンダ当り1,500馬力の中速ギヤードデイーゼル機関の開発が45年度より3カ年計画で開始されており,45年度には単筒試験機による実験が行なわれた。
(2) 巨大タンカーの開発
タンカーの大型化は輸送需要の増大や運航経済性の向上の要請と相まつて進展をつづけ,37万重量トンタンカー日石丸が46年4月に進水した。さらに,わが国への原油輸送のために,47万重量トンタンカー2隻が英国船主からわが国の造船所に発注されるに至つている。
46年3月15日から5日間,ロンドンで開催された政府間海事協議機関(IMCO)の海上安全委員会において,タンカーの衝突および座礁による流出油量を3万立方メートル以下に制限する決議がされた。これによつて,タンカーの大型化傾向が停滞する現象も出てきたが,原油の需要増大,船員の不是等を勘案すると,新しい規制のもとでタンカーの巨大化はいぜんとして進行するものと思われる。
なお,45年7月,運輸大臣より100万重量トン型タンカーの建造に関する技術開発方策について諮問がされ,現在船体構造,造船施設,港湾施設等その建造にともなう各種の技術的問題点の検討が行なわれている。
(3) 船舶の高度集中制御方式(超自動化)の開発
船舶の高度集中制御方式の研究開発が,船内労働の軽減,安全性の向上,運航経済性の向上を目的として43年度より4カ年計画で官民共同の研究としてすすめられている。
45年度においては,過去2年間の成果にもとづき,乗組員9名で運航可能な20万重量トンデイーゼルタンカーの試設計が行なわれた。この試設計においては,船舶の運航機能を船位決定,荷役制御,機関プラント監視などのサブシステムに分割し,それぞれを小型コンピユーター8台で制御し,さらに全体の統括用として1台のコンピユーターを使用する独特の方式がとられており,また9名という少ない乗組み員によつて運航することから生ずる人間工学的問題コミユニケーシヨン欠如の問題を解決するため,船内生活,就労体制,居住設備についても詳細な検討が行なわれた。なお,45年9月,これらの研究成果を大縞にと移入れた星光丸,さらに46年2月には三蜂山丸が就航して実用化兼評価試験を行なつているが,その成果は世界の注目を集めるところとなつている。
(4) LNG運搬船の開発
液化天然ガス(LNG)は,公害のない新しいエネルギー源として世界的に需要が増大しており,これにともなつて,LNG運搬船の建造需要もまた急速に増加している。すでに,外国においては46年7月現在9隻が就航中であり,37隻が建造中,15隻が計画の段階にあるが,このLNG運搬船については,貨物が-160℃の低湿であり,断熱方式,漏洩の完全防止等,高度の技術が要求される。わが国の主要造船各社は,すでに実績のある外国の専門会社からの導入技術をベースとして,それぞれ研究開発を行なつており,LNG運搬船の建造体制を整備しつつある。
(5) 造船所の省力化の研究開発
わが国より数年早く深刻な労働力不足に直面した欧米造船諸国は,船舶建造の自動化に努めてきているが,わが国においても44年度以降,造船所の省力化について共同研窮が進められている。本研究は造船所全体を1つのシステムとみなした現状分析からスタートし,現在,各種部材,配管系統の標準化機関室,ポンプ室等のモジユール化,数値制御による鋼板加工の自動化,曲りブロツクの自動組立,塗装の機械化,艤装のユニツト化等と,これらの総合システムについて鋭意開発が続けられている。
一方,船腹の需要増大に対処し,同時に建造能率の向上をはかるため,同型船舶の連続建造による量産化がはかられており,これは造船業の省力化,および船価の低減に大きく寄与している。 このような造船所のシステム化をベースとした省力化という考え方は,新鋭造船所の計画に際し,大幅に組み込まれてきている。
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