第2節 事故防止対策
輸送の安全確保は公共輸送機関の基本的使命であるので,国鉄民営鉄道とも従来から保安施設の整備拡充,従業員の資質の向上等その対策の実施に努めてきた。
国鉄では,事故防止対策の基本として,線路増設等輸送施設を拡充し,線路容量の増大を図るとともに,従業員に対する労働科学の活用,教育訓練の充実に努めている。また,運転保安設備の整備としては,CTC化,閉そくの自動化,連動装置の継電化および信号方式の改良整備を行なうとともに列車無線装置,限界支障報知装置等の列車防護用装置の整備を重点とした対策を実施している。さらに,46年2月,東北本線野崎,西那須野間において,機関士が仮眠状態となつたことが原因の列車衝突事故を契機として整備を進めていたEB装置は,47年3月末で主要線区用の機関車に取付けが完了し,逐次使用開始しており,保安度の向上が一層はかられた。
民鉄では,輸送需要の増大に対処するための大都市近郊における輸送力増強対策の推進とともに,従業員に対する教育訓練の充実による資質の向上を図ることはもとより,運転保安設備の近代化,車両の不燃化,制動装置の改善等の事故防止対策を実施している。とくに,大都市周辺の輸送密度の高い線区に対しては,従業員の責任事故等による重大事故の絶滅を図るため,ATS装置を設備することを重点とした保安対策の推進をはかり,その結果,指定線区への設置が完了した。また他の線区についても設置工事が推進されている。
さらに,46年3月富士急行において発生した制動装置の破損による列車逸走事故にかんがみ,各界の権威者による制動装置改善検討会議を設置し,制動装置の安全性,その改善方法等の対策について再検討を行ない,とくに,急勾配線区で使用される車両等緊急に改善を要する車両については,会議の中間結論に基づき,各事業者に対し,所要の改善を行なうよう指示した。
運転事故のうち大きな比重を占めている踏切事故の防止については,45年10月27日「ダンプカーによる事故防止対策および踏切道の緊急保安対策」を交通対策本部において決定し,首都圏,近畿圏,中部圏における踏切保安設備の整備を行なうとともに,さらに,46年2月8日,この緊急対策を拡充して「踏切事故防止総合対策」を同本部決定し,長期的,総合的な観点から,踏切道の立体交差化,構造改良,保安設備の整備統廃合および交通規制等の措置を全国的に行ない,踏切事故防止を積極的に推進している。
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