2 労使関係の動向


  全日本海員組合と,各船主団体,すなわち外航2船主団体(外航労務協会,外航中小船主労務協会),内航2船主団体(火曜会,一洋会),全国内航船主協会,および漁船船主労務協会との47年度労働協約改定交渉は期限満了日の3月31日までに妥結をみるに至らず,いずれも決裂し,全内航は船員中央労働委員会に調停申請を行なつた。
  組合は直ちにスト権を確立し4月中旬からストライキに入つたが,その後漁船関係は,5月13日に船員中央労働委員会の職権あつ旋により,また,全内航は調停が不調に終つたため6月5日自主交渉によりそれぞれ妥結した。
  外航2団体は自主交渉が難行を続け,また,6月29日の船員中央労働委員会の職権あつ旋も不調に終つたが,7月11日運輸大臣の仲介案を労使双方が受諾し翌日交渉が妥結した。
  一方,内航2団体も外航に続いて自主交渉により7月13日妥結したが,ストは90日余という空前の長期におよび海運労使に膨大な損害をもたらしただけでなく,輸出入貿易の停滞等により国民経済,国民生活に少なからず影響を与えた。今回の協約改定における賃金関係の組合要求および妥結結果は 〔II−(II)−14表〕のとおりである。

  今回の労使交渉をふり返つてみると,組合が昨年の執行部交代後の大会で決定した海上労働にふさわしい賃金と人間性の回復を主張したのに対し,船主側は昨年以来の景気後退とドルシヨツクによる損失等から賃金の大幅な値上げは困難であると主張し,双方の主張が大きく食違つたことが直接的原因といえるが,船舶の大型化,自動化を契機にする合理化,および人間性疎外感という問題をめぐる労使の不満ないし不信も交渉を困難にした背景の一つとして見逃せない。


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