第3節 原子力船の開発状況


  我が国の原子力第1船「むつ」は45年7月青森県むつ市の定係港に回航後,原子炉ぎ装工事,原子炉部の各種機能試験を終え47年9月には核燃料を装荷し,現在,臨界,出力上昇試験,海上公試運転に備えている。47年10月より臨界から海上公試運転までの海上での諸試験の実施を行うこととしていたが,漁民の反対があつて,これら諸試験の実施は延期されている。
  また,「むつ」の開発と併行して,(社)日本造船研究協会では一体型炉の研究,船舶技術研究所では原子力船の安全性に関する研究及び舶用炉の小型化に関する研究等が進められている。
  一方,原子力船の実用化については,世界的なエネルギー需給問題がクローズアツプされ石油価格の高騰化と船舶の大型化,高速化の要請等から近い将来,原子力船は実用段階をむかえるものとの予測が強まつている。このため,アメリカでは国の助成のもとに,一体型炉であるCNSG炉の研究及び12万馬力の原子力商船の設計が進められている。また,一体型炉を搭載した「オツト・ハーン」号を運航している西独においても,第4次長期計画が発表され8万馬力の原子力コンテナ船建造のため,試設計が進められている。
  このような世界的傾向に対処して,我が国においても,原子力第1船「むつ」の開発を進めるとともに,原子力船時代に備えるための原子力商船の開発についての検討を進めている。

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