2 運賃・料金の適正化と国等の助成措置


  前節で述べたように,公共輸送機関とりわけ陸上輸送機関の収支状況は,ここ数年慢性的に悪化しつつあり,経常費用に対する経常収入の比率(収支率)は,鉄道,バス等そのいずれもが100%を割っている状態である。これは言うまでもなく,人件費,資本費等の経費増に対して,これまでの運賃・料金の改定,企業の合理化努力によっては即応しえなかった結果によるものである。
  このような状況を背景として,48年4月以降,49年10月現在で種々の運賃の改定が実施された。すなわち,私鉄,公営鉄道関係では,49年7月,4年振りに改定された私鉄大手14社の分を含み92社,乗合パスでは266社の運賃改定が実施され,ハイヤー・タクシーでは全国120ブロックのうち54ブロックの運賃改定が行われ,81ブロックで暫定運賃が認可された。
  このほか,公共料金抑制策のため据置かれていた国鉄の運賃改定が49年10月5年振りに実施された。
  なお,家計消費支出に占める交通費の割合の推移(東京都区部)をみると, 〔2−2−24図〕のとおりである。
  本来,運賃・料金は,輸送サービスの提供に要する原価を回収するだけでなく,サービスの拡大再生産,すなわち施設の拡充整備に要する資金の調達を容易にするため,適切な余剰を生ずるような水準のものであることが必要である。さもなければ,必要な設備投資の遅れをもたらす等公共輸送機関の経営改善の能力を乏しくし,サービス水準の低下を招き,その役割をも果たしえない結果となる。のみならず,ひとたび経営に破綻を来たした場合には,その建て直しには必要以上の経費を必要とする。将来ともに良好な輸送サービスを維持していくためには,運賃問題は常に合理的にとらえ,適時適切に処理することが必要である。
  しかしながら,いわゆる過疎現象とモータリゼーションの進行によって需要が減退している地方交通機関の維持,交通空間のひっ迫,地価の高騰,環境費用の増大等から膨大な施設建設費を要する都市鉄道その他の交通基盤施設の整備,地域開発や将来の需要増にそなえての先行交通投資等の場合で,その所要経費をすべて運賃収入のみで賄うことが現実的に困難となるものについては,その費用の一部を国又は地方公共団体において負担する必要があろう。
  現在,国及び地方公共団体が公共輸送機関に行っている補助をみると,施設整備の関係では,国鉄に対する工事費補助,鉄建公団に対する国鉄新線の建設補助,及び大都市圏における民鉄線増等に対する補助,ニュータウン鉄道建設費補助,地下鉄建設費補助のほか,地方バス車両購入費補助,離島航空機補助があり,運営費関係では,中小私鉄路線の欠損補助,地方バス,新住宅地バスの欠損補助,離島航路欠損補助がある。これらのうち,新住宅地バス運行費補助は,48年度からはじめられたものである。なお,国による補助実績の推移は 〔2−2−25表〕のとおりで,補助額は年々増大している。
  いずれにしても都市及び地方における公共輸送機関の現状からみて,上述のような必要性に応じてこれに対する適切な措置を講じていく必要があろう。


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