1 開発途上国に対する運輸関係経済協力
開発途上国の経済開発の自助努力に協力るすために我が国から行われた援助は,47年の総額27億2,400万ドル(GNP比0.93%)であったのに対し,48年には58億4,420万ドル(同1.42%)に達している。また,我が国からの援助のうち,政府開発援助は,47年の総額6億1,110万ドル(同0.21%)であったのに対し,48年には総額10億1,100万ドル(同0.25%)に達している。
運輸関係技術協力は主として国際協力事業団(旧海外技術協力事業団)を通じ実施されている。
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専門家の派遣は,開発途上国の各種プロジェクトに関する計画の策定及び技術指導についてアドバイスするものであり,長期(1年以上)にわたり滞在して発展途上国の各分野についてアドバイスする長期派遣と,問題の都度派遣される短期派遣(1年未満)とがある。長期派遣の特徴としては,我が国からの効率的な資金協力の実施を目的としたインドネシアに対する陸運及び海運アドバイザーチームの派遣がある。海運アドバイザーは,46年3月以来海運,造船,港湾等の各分野にわたる専門家8名が派遣され,同国の海運再建整備のための総合的な施策立案を指導している。
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マラッカ・シンガポール海峡における船舶の航行の安全を確保するため,43年度以降水路測量及び航行援助施設等に関する国際協力を積極的に実施してきた。水路測量については,49年5月までに第3次測量が終了し,5月からはインドネシア,マレイシア,シンガポールの3か国から技術者を招き,測量結果の整理が行われた。また,ロンボック・マカッサル海峡についても,インドネシア政府の要請に基づき,49年2月から約50日間水路測量が行われた。
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開発途上国のプロジェクトに対する政府ベースによる資金協力は,各種プロジェクトの完成に必要な資材及び役務の購入に必要な円資金を無償で供与する賠償及び無償援助等と長期低利で円資金等を貸付ける円借款等に大別される。賠償に類するものとしては,フィリピン共和国との間の賠償協定に基づく賠償,ビルマ連邦との間の経済及び技術協力協定に基づく協力及び「大韓民国との間の財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力協定」に基づく協力があり,これらが従来に引き続き行われたほか,インドネシア及びスリランカに対する無償援助の一環として,漁業用訓練船の贈与等が約束された。円借款としては,48年7月締結された対インドネシア円借款協定においてバリト河浚渫プロジェクトが約束されたほか,48年9月には対コスタリカ円借款協定でプンタレナス港建設のために43億円,同年11月には対ザイール円借款協定でバナナ・マタデイ間鉄道建設等のために345億円,49年3月には対ナイジェリア円借款協定で鉄道客車140両の供与のために62億円の資金協力が約束された。
開発途上国との国際協力の一環として,各種の国際会議が開かれ多くの成果を収めた。48年4月にエカフェ総会が東京で開催されたのを初め,東南アジア運輸通信調整委員会(48年6月,ジャカルタ),東南アジア開発閣僚会議(48年11月,東京),日・タイ経済合同委員会(48年12月,東京),日韓定期閣僚会議(48年12月,東京),エカフェ貿易委員会及び同運輸通信委員会(49年1月,バンコック)等が開かれ,運輸関係プロジェクト及び海運問題等について活発に討議された。
運輸関係プロジェクトに係る経済協力は今後ますます増加する傾向にあるが運輸関係プロジェクトのように高度にシステム的性格を有する援助について十分な効果をあげるためには,計画策定の段階から調査設計,施工監督,運営管理に至るまでの一貫した技術協力を行うことが必要とされる。また,公共性が強く,多額の資金を要する運輸関係プロジェクトについては,より条件の良い借款及びグラント(贈与)による資金協力が必要とされ,今後,この方面の資金協力の充実が望まれる。
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