第3節 海難原因の究明


  海難は交通環境,気象・海象の自然的条件,船舶の性能,運航者の技能等の要因が重なりあって発生する場合が多いが,更に近年は船舶の大型化,特殊船化,専用船化等の進展に伴い,海難の様相は大きく変化し,複雑化している。このため海難審判において幅広い原因の究明と同種海難再発防止のため迅速かつ的確な事件処理をはかっている。
  昭和48年に海難審判によって明らかになった海難の原因についてみると,運航上の過失によるものが54.3%と最も多く,これに続いて機関取扱上の過失14.0%,服務規律違反11.1%,船内作業上の過失5.4%,船体・機関の構造・材質によるもの5.1%,不可抗力3.7%,その他6.4%となっており,その大部分は人の行為に起因するものである。
  また,海難の種類別についてみると,衝突事件の場合は,海上衝突予防法,港則法等の航法違反によるもの66.8%,見張不良等行船上の不注意によるもの18.6%となっており,乗揚事件の場合は,船位不確認あるいは水路調査の怠り等行船上の不注意によるもの63.7%,部下に対する指示不十分等服務規律違反によるもの21.4%となっている。機関損傷事件の場合は,機関取扱上の不注意によるもの57.8%,船体・機関の材質・工作によるもの24.5%となっている。
  カーフェリーの海難原因についてみると,霧のため視界が悪くなった場合,減速せず,また,レーダーの活用が不十分であったものが多くみられた。
  特殊な海難審判事例としては,冬季北太平洋を西航中,たまたま発生した異常な大波と遭遇し,瞬時に生じた一大破壊力をもつ外力を左舷船首部に受け,破口を生じて沈没した,かりふおるにあ丸(鉱石運搬船5万9,206トン)遭難事件がある。なお,本件に関連し気象関係者は当該海域で気象の変化が予測される場合には必要な警報等を発表し,また,付近航行中の船舶とも気象・海象に関する情報の交換を行うように要望した。

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