1 航空運送事業


(1) 収支状況及び財務状況

 ア 日本航空(株)

      日本航空(株)の昭和48年度の収支は 〔III−11表〕のとおりである。営業収入が,前年度に比べて16.0%増の2,561億6,300万円であり,これに営業外収入を加えた総収入は,同12.8%増の2,665億600万円であった。一方,総費用は前年度に比べて19.0%増の2,649億6,800万円であったため,経常利益は,同88.8%減の15億3,800万円となった。これを売上高利益率(経常利益/営業収入×100)でみると,48年度は0.6%であり,47年度の6.2%に比べ極端に悪くなっている。これは,石油危機による航空燃油費をはじめとする諸経費の異常な高騰が収益面にかつてみられなかった圧迫を加えたためである。

      48年度の営業収入をみると,国際線については,48年11月以降,海外空港の多くにおいて実施された給油制限の影響による不定期便の抑制,定期便の運休,減便等更には政府の総需要抑制策による観光旅行宣伝の自粛等の措置にもかかわらず,旅客人員及び旅客人キロがそれぞれ前年度比13.0%,16.7%の増加となり,旅客収入の伸びは同15.0%増となっている。また,貨物については,貨物トンキロ及び貨物収入がそれぞれ同22.3%,13.1%の増加となっている。国内線については,需要が前年度に引き続き増大したが,騒音対策上あるいは空港処理能力上の見地からの東京及び大阪両国際空港の発着制限に加えて,石油危機に対処するため49年1月以降毎月減便を余儀なくされ,その結果,旅客収入及び貨物収入は,前年度に比べて,それぞれ16.6%,35.2%増にとどまった。
      一方,営業費用は,石油価格の高騰を背景に,諸物価も異常に上昇し,予定原価を大幅に上回り,営業収入の伸びを上回る前年度比21.3%増となったため,経常利益は同88.8%の減となっている。
      なお,従前どおり民間保有株式に対しては,8分配当を行った。
      日本航空(株)の財務状況は 〔III−12表〕のとおりで,48年度末の総資本は,前年度末に比べ8.2%増の3,406億4,400万円に達した。また,年度末の財務諸比率をみると自己資本比率16%(47年度末17%),負債比率447%(同359%),固定長期適合率103%(同97%),流動比率91%(同110%)といずれも前年度に比べ悪化している。これは主として需要の実態に適応した機材配置を行うための大型航空機購入による負債が多額に及んだためである。

      政府としても,従来から同社に対し,出資を行っているほか 〔III−13表〕のように債務保証,政府保有株の後配当等の助成措置を講じている。

 イ その他の定期航空会社

      日本航空(株)を除く国内線定期航空運送事業者別の収支状況は, 〔III−14表〕のとおりである。全日本空輸(株)は,景気の回復に伴い需要が増大した反面便数規制が行われたため高い座席利用率が維持されたこと,幹線における競争率が向上したこと,47年7月の運賃値上げの効果が通年あらわれたこと等により,営業損益,経常損益双方で前年度を大きく上回る利益を計上した。一方,東亜国内航空(株)は,合併後46,47年度と欠損を出し,48年度も営業損益,経常損益双方で欠損を免れ得なかったが,高い座席利用率が維持されたこと,47年7月の運賃値上げの効果が通年あらわれたこと,更にジェット化の進展により輸送力を増強したこと等のため,前年度に比べて若干好転した。

      国内定期航空運送事業の最近5年間の利益率の推移は 〔III−15図〕のとおりであり,43年度までは急速に収益性が高まりつつあったが,44年度から低下の兆しがみえ,48年度は売上高営業利益率,売上高経常利益率はそれぞれ7.7%,5.5%となった。

(2) 航空機輸入金融

  従来,日本の航空企業が米国から輸入する航空機の購入資金については,購入価格の80%相当分を米国金融機関からの借款によりまかなってきた(購入価格の40%については米国輸出入銀行,40%については米国市中銀行)。この借款の債務保証は,主として日本開発銀行が行ってきた(日本航空(株)が購入する国際線用機材の米国輸出入銀行からの借款部分については,43年度から政府保証が認められた。)。
  しかし,48年度当初,当時の国際収支の状況,航空機輸入金融のための法制面における手当(日本輸出入銀行法の一部改正)ができたこと等にかんがみ,48年度には,航空機の購入について,従前の方式による米国輸出入銀行等外国からの借款部分(購入価格の80%相当分)を国内金融(日本輸出入銀行)に変更することとした。

(3) 国内航空運賃の動向

  日本航空(株),全日本空輸(株),東亜国内航空(株)については,47年7月に旅客運賃を平均9.5%,貨物運賃を平均8.6%増とする改定を行ったが,航空機燃料税の増徴,諸経費の増大などを理由に,48年8月改定申請があった。その後,48年10月以降の石油危機による航空用燃料費の急激な増大,諸物価の高騰による諸経費の増大などのため,企業努力では,吸収が困難であるとして,49年4月旅客運賃を平均39.6%,貨物運賃を平均38.7%改定したい旨の再申請が行われ,また,沖縄県内離島路線を運航する南西航空(株)からも,上記3社と同様の事由により旅客運賃を平均70.0%,貨物運賃を平均29.4%改定したい旨の申請が行われた。これらの申請に基づき,南西航空(株)を除く3社については,旅客運賃を平均29.3%(幹線27.0%,ローカル線32.4%),貨物運賃を平均27.2%(幹線26.0%,ローカル線31.0%),南西航空(株)については,旅客運賃を平均49.0%,貨物運賃を平均19.0%増とする改定をそれぞれ認め,49年9月10日から実施することとなった。


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