2 ハイジャック等防止対策
(1) 法制の整備
近年,航空交通の発達に伴い,航空機の強取・爆破等の犯罪が頻発しており,その内容も凶悪化する傾向にある。これらの犯罪は,乗客,乗員の生命,財産の安全を脅かし,航空運送事業の健全な発展を妨げ,航空の安全に対する一般国民の信頼を著しく損うものであり,また,航空交通の国際性にかんがみ,これらの犯罪に対処するためには,国際的なハイジャック等防止体制の確立が必須であるところから,国際連合の専門機関であるICAOを中心として,法制の整備作業が進められ,「航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約」(東京条約),「航空機の不法な奪取の防止に関する条約」(へーグ条約),「民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」(モントリオール条約)の三条約が作成されてきた。我が国は,既に東京条約及びへーグ条約に加入し,条約の履行のための国内法の整備を行っているが,今般モントリオール条約に加入するため関係各省庁の協力のもとに運輸省が中心となって国内法の整備として,「航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律案」を作成し,同条約とあわせて第72国会(常会)に提出したところ,それぞれ可決,承認され,7月12日から発効した。この法律の概要は次のとおりである。
@ 飛行場の設備の損壊その他の方法で航空の危険を生じさせた者を2年以上の有期懲役に処する。
A 航行中の航空機を墜落させ又は破壊した者等を無期又は3年以上の懲役に処する。
B 出発前の準備及び着陸後の整備を含む業務中の航空機を破壊した者等を1年以上10年以下の懲役に処する。
C @〜Bまでの行為の未遂についての処罰規定を設ける。
D @〜Cまでの国外犯について処罰規定を設ける。
(2) ハイジャック等防止対策
48年7月20日,日本航空(株)所属B-747型機がアムステルダム上空において,ハイジャックされた事件にかんがみ,この種の事件の再発防止を図るため,同年8月1日総理府に関係各省庁からなる「ハイジャック等防止対策連絡会議」が設立され,関係行政機関相互の緊密な連絡を図るとともに,同会議においてハイジャック等不法妨害行為防止に関する総合的かつ効果的な対策を企画,推進することとなり,同年8月29日,次の事項を骨子とする「ハイジャック等防止対策要綱」が策定され,本要綱に従い関係機関は,次の施策を推進することとなった。
@ 安全検査の強化
A 空港諸施設における警備体制の強化
B 出入国業務に関する対策の推進
C 情報及び連絡体制の強化
D 国際協力の一層の推進
運輸省は,この対策要綱に沿って空港における安全検査の一層の強化を図るため,次の事項を実施した。
@ 安全検査警備の強化策として,国内のジェット機の就航する主要16空港に,X線透視手荷物検査装置及び新型金属探知器を設置させるとともに,検査警備業務体制の確立に必要な業務委託経費の一部を助成し,体制の整備を図った。
A 手荷物の開披検査及びボディ・チェックの制度的裏付けを明確にするため,国内の定期航空運送事業者を指導して旅客運送約款の一部改正を実施させた。
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