第1節 国内貨物輸送


  昭和49年度の国内貨物輸送量は,50億8,500万トン,3,758億トンキロで,前年度に比べトン数は,11.0%減(48年度2.7%減)トンキロは7.7%減(48年度4.6%増)と近年にない落込みを示した。前年度に引き続き2年連続して減少した輸送トン数は,45年度の水準を下回るまで後退し,またトンキロでも47年度の水準を下回つた。 〔1−3−1表〕 〔1−3−2図〕

  最近における国内貨物輸送(トンキロ)の動きは,48年4〜6月期をピークとして,総需要抑制策に伴う公共投資の減少とともに下降に転じ,石油危機を契機とする景気の後退が始まった49年1〜3月期以降は生産出荷の著しい低下により,輸送量は一段と減少し始め,49年度中は回復することなく推移している。
  これを輸送機関別にみると,48年度においては,従来,毎年大きな伸びを示してきた自動車が公共投資の減退の影響を受けて,いち早く減少に転じたのに対し,内航海運は48年度中の旺盛な鉱工業生産に支えられて大幅に伸張するという対照的な動きがみられたが,犯年度に入ると鉱工業生産も落込んだため,内航海運,自動車,鉄道ともに大幅な減少となっている 〔1−3−3図〕
  まず,国鉄は前年度に比べトン数で10.2%減(48年度3.3%減),トンキロ10.1%減(48年度2.0%減)と大幅な減少となった。これは穀物がトン数でほぼ前年度並みの水準を維持したものの,他の第1次産品の落込みが大きく,また大宗貨物である金属機械工業品(トン数で15.0%減),セメント等の化学工業品(同9.2%減),軽・雑工業品(同11.2%減)等の第2次産品の大幅な落込みによるものである。また,一般的な輸送量減少傾向のなかで着実に伸びてきたコンテナ輸送量もトン数で前年度比7.4%減となった。

  自動車による輸送は,前年度に比べトン数で10.9%減(48年度5.6%減),トンキロで7.2%減(48年度8.2%減)と2年連続の減少となり,今回の不況によりもっとも大きな影響を受けた。この輸送量は45年度の水準を下回るものである。これは,自動車輸送の大宗貨物である農畜水産品(トン数で18.7%減),林産品(同19.7%減),砂利・砂・石材(同9.5%減),機械(同23.0%減),及び軽・雑工業品(同19.6%減)がすべて大幅に減少したことによる。これを営業用,自家宙別にみると,営業用がトン数で前年度比6.5%減(48年度1.3%増)トンキロで1.8%減(同4.1%減)であったのに対し,自家用がトン数で12.5%減(同7.9%減),トンキロで13.1%減(同12.3%減)と自家用の大幅な落込みが目立っている。品目別にみて営業尾自動車の比重が比較的大きいものは鉄鋼,機械,石油,食料工業品等の工業製品であるが,これら品目の自動車輸送量は全体として大幅に減少したにもかかわらず,鉄鋼のように逆に営業用自動車輸送量が増加したものがみられるなど,営業用自動車の輸送量は底堅い動きを示しており,これらの品目では自家用自動車が,景気の動向に影響される性格を有していることがうかがわれる。また,自家用自動車の比重が大きい砂利・砂・石材,木材などの輸送量がいずれも減少となったことも,自家用自動車輸送の不振の一因となっていお 〔1−3−4図〕

  内航海運は,トン数が前年度に比べ12.8%減(48年度32.4%増),トンキロが7.7%減(48年度18.1%増)と前年度に大幅な伸びを示したこともあってトン数の落込みは大きかったが,トンキロの落込みは比較的小さかった。内航貨物の主要品目についてみると,一般貨物の串で最も大きな比重を占める鉄鋼は下半期の落込みが大幅となり,前年度に比べ9.9%の減少となった。石炭は前年度比4.2%の減少にとどまった。また,公共事業関連物資であるセメントは総需要抑制の影響を受けて,89%の減少となり石灰石も44%の減少となった。
  石油製品は国内石油消費量が減少したため,前年度に比べて8.3%減少し,特に下半期の落込みが大きく他の主要品目同様,不況の影響が下半期にはっきりあらわれている。
  ここ数年,毎年大幅な伸びを続けていた航空は前年度に比べトン数で9.3%減(48年度22.2%増),トンキロで6.6%減(48年度28.7%増)となり前年度の伸び率を大幅に下回った。これを路線別にみるとトン数では幹線が前年度比11.5%減(48年度19.4%増),ローカル線同26%減(48年度26.4%増)であり,トンキロでは幹線が前年度比8.6%減(48年度26.4%増)ローカル線同1.8%増(48年度38.9%増)とローカル線の底堅い動きが目立っている。
  49年度の輸送機関別輸送トンキロ分担率は 〔1−3−5図〕のとおりで鉄道が前年度に比べ0.4ポイント減少したのに対し,自動車が0.2ポイント,内航海運が0.2ポイントそれぞれ増加し,鉄道13.9%,自動車34.8%,内航海運51.2%となった。内航海運の分担率がここ2〜3年増加しているがこれは内航海運の主要な輸送品目である石油,鉄鋼,セメント等に係る製油所,製鉄所,セメント工場等が臨海部に立地し,専用岸壁,専用船という効率的な輸送体系を作りあげたことによるものと思われる。また,従来海外から直接製油所に入っていた原油の相当量がCTS(原油貯蔵基地)経由の二次輸送の対象となったことも内航分担率増大の一因となっている。

  次に,49年度の主要品目の輸送動向をトン数でみると 〔1−3−6表〕 〔1−3−7図〕のとおりで,不況による荷動きの減退を反映して第2次産品が大きく落込んでおり,また景気の動画と関連のないと思われる野菜果物も含め,林産品,鉱産品が大幅に減少したのをはじめ,他の第1次産品も軒並みに減少した。

  まず農畜水産品は,前年度比19,1減であった。林産品は,民間住宅投資の不振から荷動きが停滞し,前年度比19.7%減と大幅な落込みとなった。総輸送量の30%強を占める鉱産品は前年度比11.6%減であったが,そのなかで約80%を占める砂利・砂・石材が民間の建築着工の減少,公共事業のくり延べにより前年度比11.9%減となった。
  第2次産品のうち,金属機械工業品は,鉄鋼が前年度比6.4%減であったが,機械が民間設備投資意欲の減退から前年度比22.5%減と大幅に落込んだため,全体では13.4%減となった。化学工業品では,セメントが建設関係の不振から前年度比11.4%減,国内石油消費量の減少から石油が前年度比7.1%の減で全体では10.9%減となった。軽・雑工業品も消費の後退を反映して前年度比19.3%の大幅減となった。


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