第2節 都市における鉄道網の整備
昭和30年代以降における経済の急速な成長に伴い,大都市圏においては,都心部へ経済活動の中枢部門が集中する一方,増大する従業者の居住地は,都心における宅地の不足等によりしだいに郊外に拡散していく傾向にある。このため,都市周辺部と中心部とを結ぶ輸送需要は,急激に増大するとともに,距離においても長距離化しつつある。
この傾向は,今後における経済成長の安定化により若干の変化を受けることが予想されるが,基本的には,輸送需要の増大が将来においても引き続くものと考えられ,都市における通勤輸送対策は,交通政策上依然として重要な課題となっている。
このような課題に対処するためには,都市周辺部と中心部の間において通勤者を大量かつ短時間に輸送することのできる鉄道の整備が不可欠であり,都市交通審議会は,東京,大阪,名古屋,横浜,神戸,福岡及び北九州の各都市について昭和60年を目途とした高速鉄道網の整備計画をそれぞれ策定し,運輸大臣に答申した。
運輸省は,これらの答申の趣旨に沿って新線の建設等を進め,輸送需要の変化に対処してきたが,これらの鉄道の整備にあたっての最大の問題は,巨額の投資に要する資金調達の困難性とその投資から発生する金利及び減価償却費の増大による収支悪化である。この改善のためには,本来受益者負担の原則にしたがい,運賃を適正化することにより対処すべきであるが,投資の懐妊期間が,長く開設当初の資金コストの低減を図るため,次のような助成措置が行われている。
地下鉄については,交通営団及び地方公共団体に対して建設費の66%相当の補助金が国及び地方公共団体から折半して6年間で分割して交付されており,公営,準公営のニュータウン鉄道については,建設費の36%相当の補助金を国及び地方公共団体が折半して4年間で分割して交付している。なお,ニュータウン乗り入れの鉄道の建設については,ニュータウン開発者に工事資金の一部を負担させることとしている。大都市及びその周辺の民鉄については,鉄道施設の建設又は大改良を日本鉄道建設公団が行い,完成後民鉄事業者に長期低利の条件で譲渡する助成措置を講じている。
助成措置以外の鉄道整備の促進のための措置としては,新規ニュータウンの住民の足を確保するため,50年9月1日に発足した宅地開発公団は,宅地開発とともに既設幹線と接続して当該宅地と都心を結ぶ鉄道を建設・経営することができることとなっている。
しかし,このような輸送の供給面からだけの対応策には空間的な制約等によりおのずから限界があり,根本的には輸送需要の抑制あるいは分散を図るべきであろう。
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