1 技術開発の動向


  船舶における技術開発は専用化,大型化,高速化等の輸送の高能率化,省力化,自動化等の運航の合理化,ならびに資源の安定確保,及び有効利用等の面から進められており,また,安全の確保,公害防止のための技術開発も進められており,これら技術開発の主要項目は次の通りである。

(1) 北方資源輸送船舶の研究開発

  エネルギー資源をめぐる最近の国際情勢の変化に伴い,資源の大部分を海外に依存している我が国の場合,従来にも増してその安定した供給体制の確立が重要な課題となっている。このような情勢に鑑み,資源の安定確保のための船舶技術の開発に対処するため,昭和49年11月に出された「エネルギー資源をめぐる環境の変化に対応するための船舶技術開発の具体的方策について」の運輸技術審議会の第1次答申を受けて,今まで未開発のまま埋蔵されている北方圏資源の輸送を確保するために必要な北方資源輸送船舶の研究開発を50年度より進めている。

(2) 巨大タンカーの研究

  48年11月に出された「10O万重量トン型タンカーの建造に関する総合的な技術開発方策について」の運輸技術審議会答申を受けて,タンカーの巨大化に伴う安全確保及び公害防止に関する技術約要件を明らかにするため49年度より3か年計画で船体構造強度,運航性能,船体の運動応答に対応する航海装置,大出力推進機関等の研究を進めている。

(3) 大型超高速コンテナ船の開発

  貨物のコンテナ化が急速に進むとともにコンテナ船は大型化,高速化している。運輸省は高速船の技術を更に向上きせるため,47年度より5か年計画で,5万重量トン(コンテナ積載個数3,000個)35ノットの大型超高速コンテナ船の開発を進めている。
  この計画のひとつである中速ギャードディーゼル機関については,48年度に1気筒当たり1,500馬力の機関を開発したが,更に49年度より3か年計画で1気筒当たり2,000馬力の機関の開発を進めている。

(4) 航行衛星利用に関する技術開発

  船舶の運航の安全性向上及び高能率化を図るためには,現用の地上局をベースとした中浪,短波での通信及び航行援助方式では通信容量,通信性能及び利用範囲等に限界があり,より高度なシステムの開発が必要とされている。
  この国際的認識のもとに,IMCOにおいて,衛星による通信,航法等について検討が進められているが我が国においてもこれに協力する一方,衛星を利用した航法,通信のシステム及び船上設備について研究開発を進めている。

(5) 船舶の防食防汚対策

  船舶の大型化に伴う造船所における塗装,防錆,清掃等の作業量が増大しており,これらを安全かっ効率的に行うため,47年度から5か年計画で,塗装の機械化等の開発,バラストタンクの腐食を防止するための研究及び運航性能に大きな影響を及ぼす藻類の付着を防止する研究を推進している。

(6) 公害防止の技術

  IMCOの海洋汚染防止条約の中で油による海洋の汚染防止のために実用化が要請されている「大容量油水分離装置」(タンカーのバラスト水等を対象)および「ビルジ排出防止管理システム」について従来から研究開発を行っているほか50年度から内海に漂う稀薄な油分を自動的に回収する「油汚染浄化装置」の開発に着手した。
  また,海上交通の輻奏する沿岸海域において船舶からの油流出事故が頻発していることから,流出油の拡散防止,回収のためのより高性能の装置(オイルフェンス及び油回収船)の開発を50年度から2か年間を目途として推進している。

(7) 省エネルギーのための技術開発

  船舶のエネルギー源は,現在もっぱら石油に依存しているが,今後の石油消費の一層の節約とエネルギー源の多様化に対応するため,昭和50年7月に出された「エネルギー資源をめぐる環境の変化に対応するための船舶技術開発の具体的方策について」の運輸技術審議会の第2次答串をふまえてスターリング機関等の開発を推進することにしている。


表紙へ戻る 次へ進む