第3節 原子力船の開発状況
我が国の原子力第一船「むつ」は日本原子力船開発事業団で開発を進めている。昭和45年7月青森県むつ市の定係港に回航後,原子炉ぎ装工事,原子炉部の各種機能試験を終え47年9月から海上での諸試験を実施することにしていたが,地元漁民等の反対があって遅延していたところ,49年8月青森県の了解が得られ,大平洋上で出力試験を実施し,8月28日初臨界に達した。しかし9月1日放射線漏れの事態が生じたため,10月15日以降定係港に係留されたままになっている。このため,原子力委員会は原子力船懇談会を設置し「むつ」の今後の措置,事業団のあり方等について検討を行ったが,同懇談会は,@原子力船「むつ」については,官民協力して開発を推進すべきであるA原子力船開発事業団については,事業団法に所要の改正を行い「むつ」の開発計画を完遂させるB原子力船実用化の見通しを明確にするため,政府が中心となり,民間の協力を受けて所要の研究開発を進める等の審議結果をとりまとめた。
一方,諸外国の開発状況をみると,米国では,サバンナに続く第2船として,12万馬力の一体型原子炉を使用するコンテナ船を検討中であり,政府の委託を受けた炉メーカーが小型一体型原子炉の研究開発を実施中である。西独では,オットハーンに続く第2船として,8万馬力コンテナ船を考慮しており,GKSS(原子力船開発運航機構)およびメーカーが既に概念検討と事故解析書を政府に提出している。英国では,運航に関する問題を検討するとともに,西独と共同で高速コンテナ原子力船建造も検討している。フランスでは,原子力研究所に船舶用陸上原型炉を建設中である。
このような世界的傾向に対処し,我が国においても,安全性に一層留意しつつ,原子力船時代に備え研究開発を推進する必要がある。
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