第3節 海難原因の究明
海難は交通環境,気象・海象の自然的条件,船舶の性能,運航者の技能等の要因が重なりあって発生する場合が多いが,近年,船舶の大型化,特殊船化,専用船化等の進展に伴い,海難の様相はますます複雑化している。このため,海難審判において幅広い原因の究明と同種海難再発防止のため,迅速かつ的確な事件処理を図っている。
昭和49年に海難審判によって明らかになった海難の原因についてみると,運航上の過失によるものが66.4%と最も多く,これに続いて機関取扱上の過失13.8%,船内作業上の過失6.1%,不可抗力5.9%,火気取扱上の過失3.1%,船体・機関に関するもの3.1%,その他1.6%となっており,そのほとんどは人為的な原因によるもので90.2%を占めている。
次に,海難の種類別についてみると,衝突事件の場合は,海上衝突予防法,港則法等の航法違反によるもの67.7%,見張不良等運行上の不注意によるもの14.8%となっており,乗揚事件の場合は,船位不確認あるいは水路調査の怠り等運航上の不注意によるもの987%となっており,機関損傷事件の場合は機関の整備不良によるもの職4%,機関取扱上の不注意によるもの25.4%,船体・機関の材質・工作によるもの工7.2%となっている。
最近,狭水道における巨大船又は危険物積載船関連の海難事件が多く発生している。なかでも,東京湾において49年11月に発生した第10雄洋丸とパシフィック・アレス号衝突事件の場合は,それが中ノ瀬航路の出口付近で発生したため,その責任の所在の判定が極めて難しいケースであったが,第一審判決は海員の常務としての避航義務を怠ったとして,両船にそれぞれ責任があるとした。
本件は第二審の請求により,現在,高等海難審判庁で審理中である。
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