第2節 国内航空輸送


  昭和49年度の我が国の国内航空輸送は,経済不況,物価上昇による消費の手控え等の影響もあって,旅客輸送量は 〔III−8表〕のとおり,輸送人員2,525万6,000人(前年度比7.4%増),人キロ176億3,600万人キロ(前年度比10.0%増)と,それぞれ前年度の増加率24.9%,26.6%を大きく下回った。幹線,ローカル線別にみると 〔III−9図〕のとおり,旅客数の伸びは幹線よりローカル線の方が大きく,49年度には国内航空旅客数において,幹線45.3%に対し,ローカル線54.7%となった。このようにローカル線の伸びが著しいのは,地方空港の整備がすすむにつれてローカル路線網が整備され,また,ジェット化がすすんできたことにより公務,商用での航空利用が容易になり,安定した利用層を確保したこと,帰省観光のための短時日の旅行における航空の有利性が認識されてきたこと,地方住民の所得水準が向上したこと等によるものと思われる。

  貨物輸送量は 〔III−10表〕のとおり,輸送重量15万8,470トン(前年度比10.0%減),トンキロ1億2,400万トンキロ(前年度比7.2%減)と,それぞれ前年度の実績を下回った。幹線,ローカル線別では,幹線がトン数で全体の74.0%,ローカル線が260%で,旅客輸送とは逆に幹線が大半を占めている。

  このように,49年度の輸送実績は低調であったが,国内航空は引き続きその輸送力の充実に努めた。49年度には,幹線では東京-札幌線,東京-福岡線に,ローカル線では東京-鹿児島線名古屋-福岡線,東京-熊本本線に,B-747SR型機(490席),ロッキードL-1011型機(306席)が投入され大型化が進められる一方,札幌-釧路線をはじめとするローカル線で,ジェット化が一層進められた。また,東亜国内航空(株)に対し,札幌-稚内,大阪-種子島,大阪-隠岐の3路線が,49年3月に発足した日本近距離航空(株)に対し,新潟-佐渡,札幌-稚内-利尻,札幌-奥尻-函館,札幌-中標津,札幌-紋別の5路線の免許が行われた。また,50年3月には,47年7月の運輸大臣通達に沿って,東亜国内航空(株)のDC-9型機(128席)による幹線運航(東京-札幌線,東京-福岡線)が開始された。更に,50年5月からは,同じく通達に沿って,東京-長崎線,東京-釧路線がダブルトラック(同一路線の2社運航)され,輸送サービスの向上が図られている。この結果,座席キロは,267億9,300万座席キロと前年度比26.3%の伸びとなった。
  前述のように,49年度の輸送需要は総体的には低調であったが,年末・年始や盆など時期によっては著しく混雑し,座席の予約が困難となる場合もみられた。運輸省はこれに対処するため,団体旅客の座席予約の規制を行った。
  現在,幹線を運営している定期航空運送事業者は,日本航空(株),全日本空輸(株)及び東亜国内航空(株)の3社であり,ローカル線を運営しているのは,全日本空輸(株),東亜国内航空(株),南西航空(株)(沖繩各島間のみ)及び日本近距離航空(株)(北海道内と新潟-佐渡のみ)の4社である。


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