2 宿泊施設
(1) ホテル・旅館
ア 整備及び利用状況
49年末現在の宿泊施設の現況は,旅館業法により営業許可を受けているホテルが1,029軒,旅館が82,609軒となっており,前年に比べてホテルは26%増,旅館はほぼ前年並とホテルの増加が顕著である。1軒当りの客室数はホテル96室,旅館は10.9室となっている。このうち,外客接遇に適する施設として,国際観光ホテル整備法により登録されたものはホテル314軒(全体の30.5%),旅館1,430軒(1.6%)で1軒当りの客室数では,登録ホテル154.7室,登録旅館45.9室となっている。
ホテル,旅館の客室整備状祝(登録ベース)は 〔IV−23表〕のとおりであり,ホテルについてみると前年に引続きリゾート,地方都市における客室の増加が目立っている。
最近においては,大量輸送時代の到来及び地価の高騰等に対処するため,ホテル,旅館の大規模高層化が急速に進展しており,特に登録ホテルにおいて,客室規模が1,000室をこえるものが,東京及び大阪で6軒に及んでおり,また旅館においても200室以上の規模を有するものの出現が顕著になってきている。
これらの宿泊施設のうち,ホテルの客室利用率を主要ホテルについてみると,46年は73.8%,47年は75.3%,48年は80.4%と年々上昇してきたが,49年は,石油危機に端を発した景気後退の影響により75.3%と下降している。またこれを地区別にみると 〔IV−24表〕のとおりであり,特に京浜地区,京阪神地区におけるホテルの客室利用率が高い。
イ 経営状況
主要ホテル,旅館の経営状況について,まず,経営規模をみると 〔IV−25表〕のとおり,ホテルでは100%が会社経営であり,しかも資本金5,000万円以上のものが78.7%であるところからみて大企業的色彩が濃厚であるのに対して,旅館では,個人経営が3.1%,資本金1,000万円以下のものが63.2%を占めていることからもうかがわれるように中小企業の色彩が強く出ている。近年,大手企業が観光産業に進出するのに伴い,大規模な旅館も出現しているが,全般的にみると会計処理等においても前近代的経営を行っている旅館が多い。
主要ホテルの収支状況をみると 〔IV−26表〕のとおりで,室料,食事料が収入の大半を占めており,支出の中で大きい費目は,人件費,材料費,支払利息及び減価償却費である。
次に主要ホテルの資産,資本構成をみると 〔IV−27表〕のとおりで,固定資産の占める割合が79.5%と全産業の40.1%に比べて著しく高い。
一方,自己資本比率は全産業なみであり,固定負債比率は,全産業の倍以上になっている。
ウ 国の施策
来訪外客の増大に対処し,都市機能の充実を図るため,ホテル及び旅館の整備について,日本開発銀行等の政府関係金融機関が融資を行っている。特にこれらの融資制度を通じて来訪外客の大衆化傾向,国民旅行需要の増大等に対処するため比較的低料金で利用できる中級ホテル,旅館の整備促進を図ることとしており,このため49年度には,融資対象範囲の拡大,貸付限度額の引き上げなど,融資条件の改正が実施された。政府系金融機関からの融資実績は 〔IV−28表〕のとおりである。
また,国際観光ホテル整備法に基づき登録ホテル・旅館に対しては減価償却資産の耐用年数の短縮及び地方税(固定資産税)の軽減という税制上の優遇措置を講じている。なお,48年9月以降,総需要抑制策の一環として,閣議決定に基づき,大規摸なホテル・旅館の新増改築を極力抑制することとなり,建築延べ面積5,000m2以上のものについて,工期の6か月延期又は規模の縮小を行うよう行政指導が行われてきたが,その後の経済情勢の変化に鑑み,50年6月16日の経済対策閣僚会議の決定により,この抑制措置は廃止された。
(2) ユースホステル
国は昭和33年度から地方公共団体に補助金を交付して,公営ユースホステルの整備の促進をはかることとし,42年度までに全国に74か所(5,120ベッド)を設置した。これらの公営ユースホステルは,地方公共団体により維持管理されている。
また,36年には,滋賀県大津市に国立ユースホステルセンター(310ベッド)を設置し,公営ユースホステルの運営に関する調査研究及び指導を行うなど全国のユースホステルの中枢機関としての役割を果たしている。
国立及び公営のユースホステルの利用状況は 〔IV−29表〕のとおりである。
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