第3節 原子力船の開発
我が国の原子力第1船「むつ」の開発,建造は日本原子力船開発事業団により進められてきた。「むつ」は昭和49年9月の出力試験の段階で放射線漏れを起こし,以後原子炉を凍結した状態で定係港に係留されたままで開発は中断されている。このため原子力委員会は原子力船懇談会を設置し,「むつ」の今後の措置,日本原子力船開発事業団のあり方等について検討を行ったが,同懇談会は@原子力船「むつ」については官民協力して開発を推進すべきであること,A日本原子力船開発事業団については日本原子力船開発事業団法に所要の改正を行い「むつ」の開発計画を完遂させる必要があること等の審議結果をとりまとめた。
これを受けて政府は,「むつ」の改修計画の検討を行い,改修,総点検を佐世保で実施すべく長崎県及び佐世保市に対し受入要請を行つた。
その結果,佐世保市は52年4月,政府の要請どおり,燃料装荷の状態での「むつ」の修理受入れを市議会において決定した。一方,長崎県議会では52年4月,燃料抜取りのうえ入港することを条件として受入れることを議決した。
また,「むつ」総点検・改修技術検討委員会は,燃料体の取扱いの安全性に関する検討を行い,52年7月燃料体の取出しは十分安全に行えることとの結論を得,あわせて燃料体を装荷したままでの修理は可能であり,安全性は十分確保できることを再確認した。原子力船に関する基礎的な研究について,船舶技術研究所は,52年度において約1億円の研究費で原子炉圧力容器の内圧破壊に対する安全性の研究等を実施している。
諸外国の開発状況をみると,米国ではサバンナ号の経験を基に政府の委託を受けた炉メーカーが12万馬力の一体型原子炉の開発を行い,さらに小型の舶用炉を開発中である。西独ではオットハーン号に続く第2船として8万馬力コンテナ船を検討しており,原子力船開発運航機構(GKSS)及びメーカーが既に概念検討と事故解析書を政府に提出している。フランスでは原子力研究所に船舶用陸上原型炉を建設し,舶用炉の研究開発に取り組んでいる。カナダでは沿岸警備隊が原子力砕氷船の建造を計画しており,現在事前評価が行われている。ソ連ではレーニン号,アルクチカ号に続く第3隻目の原子力砕氷船シベリア号が51年2月に進水した。
このような世界的な傾向に対処し,我が国においても安全性に一層留意しつつ原子力船時代に備え研究開発を推進する必要がある。
|