第1節 世界経済の動向
1978年の世界経済は,石油危機に端を発した戦後最大の不況からの回復過程にあると位置づけられ,前年に続いて緩慢な成長のうちに終った。
75年半ばから同時的に景気回復過程に入った先進国経済は, 〔1−1−1図〕のとおり,76年中頃まで急速な回復を示したが,その後は回復テンポを鈍化させつつ推移した。このなかにあって独り好調な回復を続けたアメリカと,日本及び西ヨーロッパ諸国との間で,景気回復力に顕著な格差のみられたのが,77年の特徴であった。78年に入ると,アメリカ経済にやや鈍化の兆しがみえ,日本及び西ヨーロッパ諸国の景気回復が着実なものとなってきたために,この格差は,前年に比べ縮小した。
次に主要国の動向を国別にみると,まず,77年中順調な拡大を示したアメリカ経済は,78年に入ると,寒波や炭労ストの影響等もあり,一時的に大幅な落込みとなった。しかし,4〜6月期には急速に回復し,堅調な個人消費及び好調な設備投資に支えられ,年央からは輸出が拡大基調に転じたこともあって,ドノレ防衛のための公定歩合の引上げにもかかわらず,78年中を通じて根強い上昇基調を示した。
一方,77年中景気の停滞していた西ヨーロッパ諸国では,78年に入ると次第に回復の兆しが広がり,秋以降ははっきりした回復の動きがみられるようになった。これを,主要3か国について動向をみると,イギリスは,77年末以降景気の立ち直りの兆しをみせ,78年中は個人消費を中心に回復傾向を続け,設備投資,輸出なども年末まで拡大を続けた。フランスも,個人消費,輸出を中心に78年初よりかなりのテンポで回復し,4〜6月期にやや鈍化がみられたものの,秋以降着実な景気回復となった。また,西ドイツは,77年秋以降内需中心の回復を続け,78年初の寒波等のため一時的に成長鈍化がみられたものの,4〜6月期には持ち直し,輸出の伸び悩みにもかかわらず,年央以降建設投資の増大,個人消費の堅調,設備投資の持ち直しなどから着実な回復を続けている。
国際収支,物価,雇用等の面では各国で様相が異なっている。まずアメリカでは,引き続く景気の拡大を背景に78年中を通じ雇用が拡大し,失業者数は減少したが,一方で物価の騰勢が強まり,公定歩合がたびたび引き上げられた。国際収支面では7〜9月期まで経常収支は悪化したが,10〜12月期になると貿易収支の改善によって赤字は大幅に縮小した。
西ヨーロッパでは,イギリス,西ドイツがゆるやかな景気の回復を背景に雇用の点で改善傾向にあり,物価は比較的落ちついた動きを示したのに対し,フランスでは経済の回復力が雇用情勢を改善させるほど十分でなく,求職者数が増加し,物価の騰勢にも根強いものがあるなどあまり改善がみられなかった。また,国際収支面では,イギリスは輸出見通しの改善から,フランスは貿易収支,旅行収支の黒字の拡大から,ともに経常収支が黒字基調に転じた。
次に,79年に入ってからの各国の動向をみると,年末から年初にかけて多くの国でストライキや寒波の影響を受け,一方で一次産品価格の上昇や原油価格の引上げもあって物価上昇率が高まった。アメリカでは1〜3月期に寒波等の影響のため景気の拡大テンポが鈍化し,4月には個人消費の鈍化や住宅建設の低下にトラック運転手労組のストの影響も加わり,景気上昇は急速に鈍化した。この結果,4〜6月期全体では,実質GNPが前期比2.3%減とマイナス成長に転じ,75年4〜6月期以降16四半期にわたって続いた景気上昇に終止符が打たれた。
一方,西ヨーロッパでは,各国とも4月以降,寒波やストによる年末年初の落ち込みから回復し,ゆるやかな拡大を続けているが,物価上昇率は依然高い水準にある。
以上のように,77年中は停滞していた世界貿易は,78年に入って先進国景気の拡大傾向を反映して伸びを高めた。78年の世界輸出数量は, 〔1−1−2図〕のとおり77年の前年比3.4%増を上回る同5.3%増となり,単位価格の上昇分(前年比9.3%増)も含まれるものの,輸出額(FOB)では,1兆1,758億ドル,前年比15.6%の伸びとなった。
しかしながら,世界海上荷動き量は,北海,アラスカ等における原油の生産増,輸入国における在庫の取り崩し,更にはOPEC諸国の原油生産量の減少や,世界的な鉄鉱石,石炭の在庫過剰を反映して, 〔1−1−2図〕のとおりむしろ減少した。
また,国際旅客流動量は, 〔1−1−2図〕のとおり77年は2億4,360万人であったが,78年は2億5,910万人,前年比6.4%増と順調な推移を示した。
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