第2節 国内旅客輸送


  昭和53年度の国内旅客輸送量は, 〔1−3−2表〕, 〔1−3−3図〕のとおり,輸送人員は494億人で前年度に比べ3.8%増(52年度1.9%増),輸送人キロは7,475億人キロで前年度比5.1%増(同0.2%増)と人員,人キロとも自動車(乗用車)及び航空が好調に推移したことなどにより,いずれも前年水準を上回った。

  これを輸送機関別にみると,国鉄は,輸送人員が前年度に比べ1.0%減(52年度1.6%減),輸送人キロが1.9%減(同5.3%減)と53年7月及び10月の運賃・料金改定の影響等により人員,人キロとも前年度を下回った。
  このうち,定期旅客は人員が前年度比0.1%減(52年度08%減),人キロが同0.7%増(同0.6%減)とほぼ横ばいに推移した。また,定期旅客のうち,国電の人員は前年度比0.6%増(同0.1%増),人キロは前年度比1.8%増(同0.7%増)であった。一方,定期外旅客は人員が前年度比2.6%減(52年度2.8%減),人キロが同3.6%減(同8.0%減)と人員,人キロとも前年度を下回った。定期外旅客のうち,新幹線は,人員,人キロとも4-6月期及び7-9月期は前年の水準を上回ったが,10月の料金改定以降人員,人キロとも前年実績を下回った。この結果,輸送人員が前年度比2.4%減(52年度11.6%減),輸送人キロが同2.6%減(同12.4%減)となり,平均輸送距離は前年度より0.6キロメートル減の332.1キロメートルになった。また,国電の人員は前年度比1.9%減,人キロが同2.0%減であった。
  なお,54年4-6月期の輸送実績をみると,前年同期に比べ人員が0.2%減,人キロが1.2%減となっている。このうち新幹線は人員が同1.4%減,人キロが3.6%減である。
  民鉄は,輸送人員が前年度比0.6%増(52年度2.9%増),輸送人キロが同2.3%増(同3.5%増)と人員,人キロとも前年度を上回り横ばいに推移した。このうち,定期旅客は前年度に比べ人員が0.1%減(52年度2.2%増),人キロが1.9%増(同2.9%増)であった。また,定期外旅客は人員が前年度比1.8%増(52年度4.1%増),人キロが同3.3%増(同4.7%増)であった。
  自動車(軽自動車による輸送量は含まない。以下同じ。)は,前年度に比べ輸送人員が6.1%増(52年度2.4%増),輸送人キロが9.3%増(同1.5%増)と好調に推移した。このうち,バスは人員が前年度比2.2%減(52年度0.4%減)と48年度以降6年連続して前年度実績を下回ったが,人キロでは同2.3%増(同6.0%増)と51年度以降増加基調にある。これを,営業用,自家用別にみると,営業用は人員が前年度比3.2%減,人キロが同2.5%増であり,営業用バスの大宗をなす乗合バス(人員で97.8%,人キロで56.6%)でみても人員が前年度比3.3%減,人キロが同1.0%増と人員では減少,人キロで増加している。自家用は人員が前年度比3.6%増,人キロが同1.8%増と人員,人キロともほぼ横ばいに推移した。
  一方,乗用車についてみると,人員は前年度比10.5%増(52年度3.9%増),人キロは同12.2%増(同0.2%減)といずれも好調に推移した。これを営業用,自家用別にみると,営業用は人員が前年度比3.8%増,人キロが同6.4%増と堅調に推移し,また,自家用は前年度に比べ人員が11.8%増,人キロが12.5%増と高い伸び率を示した。
  航空は,前年度に比べ,輸送人員が12.8%増(52年度16.4%増)輸送人キロが13.9%増(同17.5%増)と人員,人キロとも依然として好調に推移した。路線別(不定期を除く。)にみると,幹線は沖縄路線が依然好調な推移を示したが,東京・大阪,東京・札幌の各線の伸びが比較的低調であったため人員が前年度比9.6%増(52年度16.0%増),人キロが同11.1%増(同17.2%増)の伸びに終った。また,ローカル線は人員が同15.2%増(同16.7%増),人キロが同17.2%増(同17.8%増)と国際線の成田への移行に伴う羽田関係路線の増便,定期路線の開設(14路線)等もあって好調に推移した。
  また,座席利用率は,幹線が68.7%(52年度66.5%),ローカル線が74.9%(同74.6%)といずれも前年度の水準を上回り,幹線・ローカル線計では71.5%(同70.0%)になった。
  なお,54年4〜6月期の輸送実績は,前年同期に比べ人員が16.8%増,人キロが18.2%増と好調に推移している。
  旅客船(一般旅客定期航路のほか,特定旅客定期航路及び旅客不定期航路を含む。)は,輸送人員が前年度に比べ0.1%増(52年度1.3%減),輸送人キロが同1.8%減(同2.3%減)となった。このうち,長距離フェリーによる旅客輸送人員は前年度比5.2%減,輸送人キロは同5.1%減であった。
  また,一般旅客定期航路における自動車航送台数は,2,062万台(長距離フェリーは180万台)で前年度比2.8%増(同1.6%減)であった。このうち,乗用車は前年度に比べ2.9%増(同4.5%減),バスは16.0%増(同3.5%増),トラックは2.1%増(同1.6%増)であった。
  次に,旅客の流動を新幹線及び国内定期航空の旅客輸送を比較してみる 〔1−3−4表〕。新幹線の輸送人員は,39年10月の開業以来50年度まで増加傾向にあり,47年度の岡山開業,50年度の博多開業に伴い大幅な増加となった。しかし,51年度以降の輸送人員は減少傾向にある。また,平均乗車キロは,博多開業により50年度は一時的に延伸したものの年々短縮傾向にあり,53年度では332.1キロメートルとなった。

  国内定期航空は42年度から45年度にかけて年度平均30%を超える輸送人員の増加を示したが,その後,新幹線の岡山及び博多開業,航空運賃の改定という減少要因があったものの,沖縄本土復帰,沖縄海洋博,国鉄との運賃格差による競争力上昇等により,輸送人員は着実に増加を示した。これを平均乗機キロの推移でみると47年度の沖縄復帰,50年度の沖縄海洋博により延伸したことが特記される。
  一方,中・遠距離の地域間における輸送機関の輸送分担関係を47年度と52年度の変化でみると 〔1−3−5図〕,新幹線が博多まで延長されたことにより阪神・北九州間で鉄道がシェアを増加させ,航空がシェアを低下させた例を除き概ね航空は輸送量,シェアとも増加した。阪神・四国間,四国・南九州間では旅客船の占めるシェアが優位である代表例であるが,旅客流動は絶対量で大きく減少している。また,阪神・四国間では自動車の落込みが目立った。北海道については,南関東及び阪神との間では従来から航空のシェアが圧倒的であったが,52年度には更にそのシェアを増加させている。北海道と東海との間では,南関東と南九州の間及び南関東と北九州の間と同様,従来は鉄道が第1位のシェアを占めていたが,52年度には航空のシェアが優位となった。

  また,主要区間での国鉄と航空機の輸送人員を比較すると, 〔1−3−6表〕のとおり各区間とも前年度比でみると国鉄は減少率が,航空は増加率が年々小幅となってきている。

  旅客輸送人キロの対前年度増加率に対する輸送機関別寄与度をみると, 〔1−3−7図〕のとおり、自動車が4.85%,民鉄が0.37%,航空が0.46%といずれも前年度に引き続きプラスになった。特に,自動車の増加のうち自家用自動車が前年度に比し3.7ポイント増の4.46%と顕著であった。一方,国鉄と旅客船は4年連続のマイナスでそれぞれマイナス0.54%,マイナス0.02%となっている。

  この結果,53年度の輸送機関別旅客輸送人キロ分担率は, 〔1−3−8図〕のとおり,前年度に比べ乗用車が2.5ポイント増の39.6%,航空が0.3ポイント増の3.6%になったのに対し,国鉄は1.9ポイント減の26.2%,民鉄は0.4ポイント減の15.4%,バスは0.4ポイント減の14.3%に低下した。また,旅客船は0.9%と前年度と同様横ばいに推移した。


表紙へ戻る 目次へ戻る