3 海洋汚染に関する海洋法会議の動向


  海洋法会議では,船舶に起因する海洋汚染問題が主要な審議事項となっており,200海里経済水域における沿岸国の汚染防止管轄権を認めることを前提とした上で内水,領海,経済水域における沿岸国,旗国,入港国の法令制定権の範囲,取締りの態様について審議が行われている。海洋汚染に関する条項は,第6会期終了直後にまとめられた非公式統合交渉草案(ICNT)によって一応まとまったかにみえたが,第7会期直前にフランス沿岸で発生した大型タンカーの事故を契機として,とくに沿岸国を中心に汚染防止権限を強化する方向で多数の修正案が出され,第7,第8会期において活発に審議が行われた。その結果,かなりの修正案についてコンセンサスが得られ,第8会期の終了後には,ICNTの改訂版が出されるに至った。海洋汚染条項については,なお一部に不満を表明している国もあるが,参加国の大勢は長い審議の結果であり,海運国,沿岸国の利書の微妙なバランスの上にたった規定であるとしており,ICNT改訂版の規定がそのまま海洋法条約となる可能性が強いとみられる。


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