1 旅客輸送


(1) 地域交通対策の充実

  高度経済成長期を通じて激化した大都市への人口,産業等の集中現象は,大都市の過密,地方の過疎として深刻な経済,社会問題を惹き起し,モータリゼーションの進展と相まって,旅客交通に極めて重大な影響を与えてきたが,1970年代に入ってこのような集中現象ば緩和しつつあり,地方における人口定着の兆しがみえている。 〔2−1−57図〕は三大都市圏,地方圏別転出入人口の推移を示したものである。地方圏から大都市圏への転入超過は44年度以後一貫して減少しつつあり,53年度ではほぼ転出入は差引きゼロの状態で,三大都市圏の社会増は停滞気味となっている。しかし,人口の絶対数は,今後とも自然増により増大すると推計されている。

  次に,工業出荷額をみると,三大都市圏の全国に占める分担率は,45年62.7%であったが53年には57.1%に低下し,県民所得も45年度60.5%から52年度53.6%へ,小売業年間販売額も45年51.7%から54年49.5%へと低下傾向にある。産業,所得,消費等の点からみて,大都市圏の相対的地位の低下は認めざるを得ないものとなっている。しかしながら,大都市における集積による効率,利便を求めての機能の集中,なかでも,大都市への中枢管理機能の集積は,依然として著しいものがある。高度成長期を通じて持続して来た市街地の外延的拡大と都心部への業務機能等の集中は続いており,交通事故・公害の発生や通勤・通学輸送の長距離化,ラッシュ時の混雑,交通渋滞及びこれによるバスの走行速度の低下等輸送サービスの改善の遅れといった都市交通問題は,依然として大きな課題として残されている。また,札幌,福岡,広島,仙台等の地方ブロックの中心都市,県庁所在地たる都市やこれに準ずる規模の都市においては,人口が全国平均以上の伸びを示し,大都市圏からの人口のいわゆるUターン,Jターン現象や周辺市町村からの人口の転入等により,市街地の拡大等都市規模は発展している。こうした中で,大都市圏と同様,都市交通問題が深刻化してきており,地下鉄等の整備,バスサービスの改善等が急務となっている。その他の地方中小都市においても,自家用乗用車の急増による交通混雑の激化等により,バスサービスの相対的低下が利用者のバス離れを促進しており,人件費,燃料費等諸経費の高騰と相まって,バス事業者の経営は悪化している。市民のモビリティを確保する見地からその対策が急務となっている。
  また,農山村等の人口密度の低い地域においては,人口の流出,自家用乗用車の急速な普及等によりバス,鉄道等の輸送需要が大幅に減少し,その維持が困難となっており,自家用乗用車を利用できない住民等に対するシビルミニマムとしての公共交通サービスの確保が大きな問題となっている。

 ア 大都市交通対策

      三大都市圏においては,いわゆる人口のドーナツ化現象が進行している。人口は, 〔2−1−58図〕のとおり,45年から55年3月末の増加率でみて,首都圏は都心から30〜40キロメートル帯,京阪神圏では20〜30キロメートル帯の増加が著しいのに対し,10キロメートル以内の都心部では減少している。

      こうした都市構造の変化は,都市交通にも大きな影響を与えて来た。まず,三大都市圏における旅客輸送人員の推移をみると, 〔2−1−59図〕のとおり,総輸送量は次第に伸びが鈍化しつつあり,49年度に減少した後は微増傾向にある。また,輸送機関別分担率の推移をみると,44年度に比べ,自家用乗用車,地下鉄の分担率が高くなり,国鉄,民鉄は微減,バス,ハイヤー・タクシー等は低下している。自家用乗用車の分担率の拡大傾向は変らないものの,伸びはやや頭打ちの傾向をみせている。一方,大都市における道路混雑はなお激しいが,最近では混雑状況もやや改善の兆しをみせはじめている。

      これは,地下鉄等公共交通機関の充実,駐車規制等交通規制の強化等によるものと考えられる 〔2−1−60図〕

      従来は都市の道路交通量の増大に対し,道路容量を拡大することで対応がなされて来たが,今日,新しく道路を整備することは,道路スペースの確保難,市民の生活環境保全意識の高まりから極めて困難となっている。このため,限られた道路空間を効率的に使用するためには,輸送効率が悪く,道路混雑の原因となっている自家用乗用車を中心に交通量を減らすことが,大きな問題となっている。このことは,環境改善,交通安全の面からも必要であるとともに,公共交通機関のサービス改善にも資するものである。こうしたことから,都市における自動車交通総量の削減をねらいとし,自家用乗用車利用の適正化を図るとともに,バス等公共交通機関を優先させ,交通空間の有効利用,低公害等を目ざした大都市交通の改善対策が,1960年代の後半から推進されて来た。また,最近の省エネルギーの要請の面からも,エネルギー効率の高い公共交通機関の整備を重視した対策の重要性が高まっている。
      公共交通機関の整備は,輸送力の整備,サービスの改善,乗継機能の強化等について,地域の事情を考慮した具体的措置が検討され,推進されている。まず,鉄道については,大都市のスプロール現象の拡大に伴って,都心部と周辺部のベッドタウンを結ぶ通勤を主体とした高速鉄道による旅客輸送は増大し,長距離化の傾向にある。通勤需要の特性として,大量の輸送需要が,朝夕のラッシュ時に集中し,片道輸送の度合が大きい等のため,投資効率が悪い。更に,地価,工事費の高騰,都市交通空間不足等により,巨額の資金を要し,資本の懐妊期間が極めて長いこともあって,企業ペースだけの整備は困難となっている。このため,国鉄に対する工事費助成や財政投融資,地下鉄等の建設費補助,日本鉄道建設公団による国鉄の新線建設並びに民鉄の新線建設及び線増,民鉄に対する財政投融資等の措置がとられている。このような措置もあって,大都市圏の国鉄,民鉄,地下鉄の新線建設,線増,列車編成の長大化,運行回数の増加,更にニュータウン鉄道の建設等鉄道の輸送力整備が推進されてきている。また,快速電車の運行,鉄道の相互乗入れ,車両の冷房化等のサービス改善が行われ,乗り換えホーム,連絡通路の整備等乗り継ぎの不便を改善する措置が実施されてきている。このような対策によって,例えば,主要区間における混雑率は 〔2−1−61図〕のとおり改善され,また車両の冷房化率(大手民鉄14社)も42〜54年度で6.4%から54.8%に改善された。しかしながら,なおラッシュ時における混雑率は高水準である。このため一層の輸送力増強を図る必要があるが,近年,沿線地域における環境保全の要請,用地取得難,建設費の高騰等の制約が強まっている。

      なお,現在都市における新しい交通機関として,道路混雑,交通公害等の諸問題に対処するとともに,ニュータウン等新しい輸送需要に応えるため,在来型の交通体系の補完改良を主な目的としてモノレール等の新しい中量軌道システムの開発,建設等が進展している。
      次に,バスとタクシーについてみると,バスは鉄道の補完または代替的交通手段と位置づけられ,市民の足として日常生活にきめ細かい面的なサービスを提供してきたが,交通渋滞の激化による交通環境の悪化のため, 〔2−1−62図〕のとおり,運行速度の低下,定時運行の困難な状況が続いており,他方,バス輸送サービスそのものについても立ち遅れが生じたため,バスは都市交通機関としての信頼性を失っており,利用者のバスに対する不満は大きいものがある。 〔2−1−63図〕は,三大都市圏の乗合バス実車走行キロ,乗合バス輸送人員,自家用乗用車輸送人員,自家用乗用車数の推移をみたものである。走行キロ当りバス輸送人員の低下と自家用乗用車数の増大が対照的である。タクシーは,自家用乗用車に近い機動性と快適性をもち,1960年代には,バスとの相対的運賃が割安ということもあって通勤・通学,買物に下駄代りとたとえられるような利用がなされたこともあったが,運賃の適正化,自家用乗用車の一層の普及等の影響により,70年代は三大都市圏全体及び都心部とも輸送分担率(人員)は8%から5%程度に落ちている。

      バス・タクシーの輸送サービスの改善は,基本的には昭和46年の運輸政策審議会の「大都市交通におけるバス・タクシーのあり方及びこれを達成するための方策について」の答申に沿って,大都市バス・タクシー輸送改善対策が策定され,バスの輸送力の改善,信頼性の回復,乗り継ぎ機能の強化及びタクシー輸送の改善がなされてきている。
      バス・タクシーの輸送サービスの具体的な改善措置として,バスについては,@バスの走りやすい交通環境づくりの措置として,バス専用レーンの設置,バス優先信号の導入等が,A利用者に高度なサービスを提供するための措置として,利用者にバスの接近情報を知らせるバスロケーションシステムの導入,停留所の改善,バス路線再編成のためのバス乗継ターミナルの整備,バス車両の低床・広ドア,冷暖房化,共通乗車の実施等が,B都市構造,需要構造の変化に対応した輸送力の確保対策として,バス路線の再編,新住宅地バス路線の開設,循環バス路線の開設,終車延長,高速道路バスの運行,買物バスの運行,ディマンドバス,ミニバスの運行がある。このようなバス輸送サービスの改善向上策によって,市民のバス利用の促進に努めている。
      タクシーについては,路線バスを補完するものとして郊外鉄道駅から住宅団地等への乗合タクシーの実施(東京,大阪等),無線タクシーの増強,呼出し電話の設置,乗場の整備のほか,陸運局の指導の下に,タクシー近代化センター,事業者団体等が乗車拒否等に対する街頭指導,運転者の研修や苦情の処理に努めている。また,各地で専用車等身障者のためのタクシーサービスが提供されて来ている。

 イ 地方都市交通対策

      三大都市圏以外の地域における自家用乗用車の旅客輸送に占めるウエイトの拡大は,三大都市圏以上に著しいものがあり, 〔2−1−64図〕のとおり,輸送人員で44〜53年度の間に33.5ポイントも増え,52.9%に達している。このため,すべての公共交通機関の分担率が低下して来ており,なかでも乗合バスの後退が著しい。

      札幌,福岡,広島等の地方ブロックの中心都市にあっては,人口の増加,中枢管理機能の集積,市街地の外延化,周辺ニュータウンの建設等,大都市と同様の人口,産業配置が進んでおり,その他の県庁所在地を含む地方都市においても同様の傾向がみられる。 〔2−1−65図〕は,札幌,福岡,広島の各都市及び政令指定都市以外で人口40万以上の都市のグループ及び30万人以上40万人未満の都市のグループそれぞれについて,人口,自家用乗用車数,乗合バス走行キロ及び輸送人員,鉄軌道輸送人員等の推移をみたものである。札幌,福岡,広島市の人口の増加がそれ以外の都市のグループより著しいが,これは,これらの都市が,大都市圏からの人口の,いわゆるUターン,Jターンの主な受皿となっていること,就業機会や都市機能の整備が比較的充実しつつあること等のためと思われる。また,都市規模の小さいグループほど自家用乗用車の増加が著しく,反対に乗合バスの輸送人員の減少が大きい。更に,乗合バス走行キロについては,54年度においても45年度と比べ,それほどの落ちこみはみられないが,バスの走行キロ当たり輸送人員の低下が,都市規模の小さいグループほど進行している様子がうかがえる。一方,鉄軌道の輸送人員は,路面電車の路線の廃止・縮少もあって乗合バス以上に利用者が減っているが,46年に地下鉄が開業した札幌市だけは,逆に大幅に増加する傾向にある。 〔2−1−66図〕は,各都市の通勤者の交通手段の利用状況を53年度から54年度にかけて行ったアンケート調査結果からみたものである。各都市の差はあるが,比較的バス等公共交通機関の利用者が多い通勤目的のトリップにおいても,自家用車が最も多く利用されている。

      地方都市においても,人口の増加,都市の外延化,自家用乗用車の増大等の現象と併行して道路混雑による交通渋滞,通勤・通学輸送の長距離化,ラッシュ時の混雑及び鉄軌道,バスの輸送需要全体の低下による経営悪化といった都市交通問題はますます深刻化しており,このまま推移すれば,都市によっては鉄軌道・バスサービスの維持が極めて難しくなるおそれがある。こうした事態は,市民全体のモビリティにとって大きなマイナスになると考えられる。この点に関連し,市民の意識をみると,例えば 〔2−1−67表〕のとおり3都市において,アンケートに回答した自家用乗用車による通勤者のかなりが,公共交通機関の改善,環境条件の変化によっては,自家用乗用車から転換する意向を有している。公共交通機関を整備し,自家用乗用車利用の増大を抑制するために,都市の実情に応じて地下鉄等の整備,バスサービスの改善が進められている。札幌市では,46年に地下鉄が営業を開始し,輸送人員は毎年着実に増え,54年度1億7,687万人に達している。福岡市は59年5月を開業目標に地下鉄が建設中であり,仙台市は55年5月に免許を受け,現在建設のための準備を進めている。
      今なお路面電車を維持している長崎市,広島市等の関係事業者は,環境やエネルギー面からの路面電車の評価に応えて,高性能で快適な新型車両,運行状況表示装置の導入等を試みている。

      乗合バスは,地方都市においては主要な公共交通機関として,大都市と同様,バス機能の確保とサービス改善のための措置を講じている。また,主として,人口10万人以上の都市を対象に,駐車規制の強化,一方通行の拡大等交通規制の強化により自動車交通量の抑制,交通渋滞の緩和が図られるとともに,バスの走りやすい環境作りとしてバス専用,優先レーンの設置等により,バスの運行効率の改善が推進されている。

 ウ 地方交通対策

      地方の人口密度の低い地域においては,過疎化の進行による人口の減少と自家用乗用車の急速な普及により,公共交通機関の輸送需要の減少は都市地域に比べ一層厳しく,このためバス,鉄道の運営が困難になり, 〔2−1−68図〕のとおり,この10年間に路線の廃止,縮少が著しく進行した。

       〔2−1−69図〕のとおり,過疎地における交通の実態をみると,山形,福島,滋賀県等の一部の過疎市町村の住民を対象に実施したアンケート調査の結果によれば,自家用乗用車利用によるトリップが30〜40%台を占めているのに対し,路線バスが10%前後,鉄道は10%弱,その他送迎バス,自転車,バイクが利用されており,自家用乗用車が過疎地域の交通に最も大きなウエイトを占めている。

      過疎地における公共交通機関の役割を路線バスの利用状況でみると, 〔2−1−70図〕のとおり通学,通院,買物等で相当利用されており,また 〔2−1−71図〕のとおり,男性よりも女性の利用が多く,更に 〔2−1−72図〕のとおり,老人,子供の利用が目立っている。路線バスは,過疎地の老人,子供等いわゆる交通弱者の日常生活に不可欠な交通手段となっており,したがって 〔2−1−73図〕のとおり,住民の路線バス存続の希望は極めて強い。

      生活路線維持の観点から,減少していく輸送需要のもとにあって経営状況が極めて悪化しているバス事業者に対して, 〔2−1−74図〕のとおり地方バス路線の運行維持費及びバス車両購入費等について補助等の助成を行い,また, 〔2−1−75図〕のとおり,地域の実情に応じ路線維持の困難な路線バスの市町村代替バスヘの転換等の措置がとられている。

      鉄道については,国鉄に対する地方交通線の運営のための補助, 〔2−1−74図〕のとおり中小民鉄に対する路線維持のための補助等がなされているが,後述するように国鉄の地方交通線対策の問題がある。
      更に,離島航路,離島航空路は,離島住民の生活の安定と福祉向上に不可欠な生活の足ともいうべきものであり, 〔2−1−76図〕のとおり,路線維持のための補助が講じられている。

      以上,大都市,地方都市及び地方に分けてそれぞれの地域の旅客交通事情と今までにとられてきた公共交通機関の改善措置について述べてきたが,今後,地域交通対策を進めるに当たっては,次の点を考慮する必要がある。
      その第1は,自家用乗用車の地域交通に果す役割ないし機能の評価と地域住民全体のモビリティを充実し,豊かな地域社会を作っていくための公共交通との合理的分担関係の確立である。事実として,自家用乗用車は,都市及び地方の何処においても,多くの住民に利用されており,公共交通機関によって満たされない交通利便を提供するものとして,今後も増加する傾向にある。しかし,地方では,自家用乗用車の増大,人口の減少等のため,バス,鉄道の輸送需要が減少し,その維持,確保が困難になっている。このような公共交通機関の状況は,経済的,技術的理由によって自家用乗用車を利用できない人々(特に老人,年少者等)のモビリティの手段をなくし,地域住民全体のモビリティを著しく低下させるおそれがあり,かかるおそれが現に進行している。一方,地方の人口構成の高令化は,ますます公共交通機関の必要性を増すこととなる。
      自家用乗用車の利用者といえども,家族のために,一時的に車を利用できない場合のために,公共交通機関の存続を望む者が多い。したがって,地域の実情を踏まえ,シビルミニマムとしてこの公共交通の維持・確保に努める必要がある。
      また,都市においては,通勤・通学輸送はもちろんのこと,市民の日常生活上も公共交通機関が必要であり,交通安全,環境保全,交通空間の有効利用,更に省エネルギーの観点から,できるだけ公共交通機関を利用することが要請されている。一方,公共交通機関は,当然のこととして,市民のあらゆる交通上の要請に必ずしも十分に対応できない面もあり,個人の交通手段選択の自由にも配慮する必要もあろう。
      第2は,地方において少なくともシビルミニマムとしての公共交通を維持確保するとともに,都市においてできるだけ自家用乗用車利用から公共交通機関への転換を図るための,有効な対策と必要な助成措置の問題である。
      地方においては,公共交通事業者は,輸送需要の大幅な減少に対し,主として鉄道は運転本数及び編成車両の減,更には乗合バス輸送への転換により,また,乗合バスは運行便数の減,路線の縮少廃止,又は市町村代替バスヘの転換により,それぞれ対応するとともに,運賃改定をあわせて行い,経営の改善を図ってきた。しかし,市町村代替バスについても,市町村財政の限界から円滑にその転換を図ることが難しくなっている。
      自家用乗用車の共同使用,乗合タクシーといった,いわゆるパラトランジット導入の提案もなされているが,現状では問題が多くその克服が今後の課題である。
      公共交通の維持については,関係者が協力して有効と考えられる提案を試行し,成果を確め,定着させる努力がますます重要となっている。
      また,地方において,シビルミニマムとしての公共輸送を維持確保するためには,交通事業者に対する公的助成が果している役割が大きく,今後とも適切な施策を講じていくことが必要と考えられる。
      都市においては,今までに,運輸省及びその出先機関は,地方公共団体,交通事業者等関係者の協力の下に通勤・通学輸送のための鉄道輸送力の整備,乗合バスサービスの向上のための改善措置等公共交通機関の整備改善を進めてきたが,今後,更に都市の実状に応じ鉄道輸送力の整備,都市の基幹的なバス路線についての大幅なサービスの向上,鉄道相互間及び鉄道,バス間の乗継機能の改善等を図り,利用者の利便を増すような対策を必要に応じ,検討し,試行することが必要であろう。
      なお,交通事業者の努力には限界があり,通勤・通学輸送の改善を図るための鉄道輸送力の整備,ニュータウン鉄道建設及び新住宅バス路線開設,更には,54年度から乗合バス輸送の改善を図るためバスロケーションシステム及びバス乗継ターミナル整備の補助が行われているが,都市交通の改善のために公的助成が果たしている役割が大きい。今後とも適切な施策を講じてゆくことが必要と考えられる。
      第3に,今後の地域交通対策を計画的に進めていくため,地方陸運局の地方陸上交通審議会(利用者代表,学識経験者,地方公共団体及び関係行政機関の代表者等で構成)を活用し,例えば,地域交通計画を策定する等,地方公共団体等関係者の理解と協力の下に,地域交通対策を推進する必要がある。

(2) 幹線交通体系の整備

  幹線旅客輸送量の推移をみると 〔2−1−77図〕のとおり,40年度から53年度に,約2.4倍に増えており,48年の第1次石油危機までは高い伸びを示したものの,それ以降は伸びが鈍化している。実質民間最終消費支出も40年度から53年度に約2.4倍に増加したが,44年度までは,幹線旅客輸送量とほとんど等しい伸びを示している。その後,幹線旅客輸送量は45年度から52年度までは実質民間最終消費支出を上まわって伸びている。また,総旅客輸送量と幹線旅客輸送量とを比べると40年度以降,幹線旅客輸送量の伸びが高くなり,45年度から48年度の間に伸びの差が大きく開いた。

  このような幹線旅客輸送の大きな伸びの背景には,我が国経済の急速な成長に伴う国民生活の向上,経済活動の活発化等がある。このような幹線旅客輸送需要の急速な増大に対し,交通関係社会資本の整備は立ち遅れたが,1960年代後半から70年代にかけて重点的に投資された。その結果, 〔2−1−78図〕のとおり,新幹線は,昭和39年東京-新大阪間,47年新大阪-岡山間,50年岡山-博多間と開業し,54年度末,総延長1,177キロメートルに,高速自動車国道は,40年名神高速道路線開通,44年東名高速道路全線開通等,総延長2,579キロメートルにそれぞれ達している。また,ジェット機就航空港は38年度から54年度の間に24空港となり,そのうち54年度末で,10空港に大型ジェット機が就航している。長距離フェリーは,43年度から54年度に22航路が整備された。

  これらの幹線旅客交通施設の整備によって,幹線旅客輸送需要の増大は支えられてきたが,同時に国民の時間価値の増大,産業構造の高度化に伴い,観光,業務等の旅行の時間短縮及び快適さを求める国民の高度化志向に対応して輸送需要を誘発した効果も大きいと考えられる。
  また,高速かつ快適な旅行を確保する新幹線,航空,高速道路等の整備は,地域経済社会へ影響を与えてきた。業務のための連絡,打合せ,情報伝達は迅速化し,大都市等に存在する文化的,社会的施設の利用も容易となった。また,例えば,東海道新幹線開通後,停車都市の卸売・小売販売額,工業出荷額,建築着工面積,人口等の伸びが著しく,開通前により高かった非停車都市のそれらの伸びを上まわっていること,東名高速道路の各インターチェンジ圏の工業化の度合が静岡,浜松等の中核都市から他のインターチェンジ圏へ分散化していること,鹿児島空港の整備(47年)前後より空港周辺に知識集約型企業の進出が目立つこと等にみられるように,幹線交通施設の整備が関係地域の人口,産業,経済機能等に大きな変化を惹き起している。したがって,幹線旅客交通施設の整備と産業立地,社会的文化的施設の整備等の施策を有機的に組み合せることによって,大都市への人口と産業の集中の抑制と地方の振興を図り,もって国土の均衡ある発展に資することができるものと考える。
  このような考え方の下に,全国幹線交通体系の整備に当たっては,輸送需要の見通し,輸送機関の経営のあり方等に配慮しつつ,地域の社会経済活動に対応して幹線交通のサービスを全国にわたって均衡化することを長期的基本目標としてきたところである。
  これに基づき,まず,鉄道については,東北,上越新幹線の完成を図るとともに,整備計画5新幹線について財源措置等諸条件が整備されたうえで,投資採算等も考慮して逐次その建設を図ることとしているほか,北海道,本州を結ぶ青函トンネル及び本州四国連絡ルートのうち児島・坂出ルートの完成を図ることとしている。
  また,航空については,新東京国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開計画を進めるとともに,関西国際空港の建設及びジェット機,大型機の就航に対応した地方空港の整備を推進することとしている。
  今後,幹線交通体系を整備するに当たっては,交通をめぐる我が国の経済社会情勢が著しい変化の過程にあることに留意しなければならない。
  すなわち,我が国経済の高度成長から安定成長への移行に伴い,厳しい財政事情の下において,幹線交通体系の整備のための投資についても従来以上に重点化,効率化の要請が強まっている。
  また,これまで石油を中心とする豊富で安価なエネルギー供給を当然の前提としてきた我が国経済及び国民生活にとって,その有限性への対応の必要性が強く認識されるに至っており,交通体系の整備に当たってもエネルギーの制約への対応が検討されなければならない状況となっている。
  更に,交通施設を整備する場合の用地取得が一層困難になる等交通空間の確保の問題が深刻になっていること,自動車,新幹線,航空機による騒音等の交通公害に対する環境の保全が重要な課題となっていること等交通をとりまく諸々の制約が強まっている。
  このような,我が国の経済社会情勢の変化に対処するため,幹線交通体系の整備に当たっては各輸送機関の特性を踏まえ,国民経済的に最も効率的な交通体系を形成していくことが従来以上に強く求められるものと考えられる。


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