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2 貨物輸送
今後,貨物輸送をめぐる環境は一層厳しくなっていくと考えられる。
第1に,輸送需要の伸びの鈍化傾向が中・長期的に定着すると思われる。このため,かってほどの大量の輸送需要の増加は期待しえない。また,荷主サイドにおいては,一層輸送コスト削減の要請が強まる。すなわち,48年の第1次石油危機を契機に荷主サイドでは流通部門を含め,あらゆる部門でロスの極小を図り減量経営の定着に努めてきており,特に総コストの縮減を図るため輸送コストの削減に力を入れている。このため,従来にもまして,輸送サービスの選択に際しては,貨物の種類等に応じて,より費用効果的な観点からサービスの質,機動性,低廉性,確実性,戸口性等が厳しく問われよう。こうした背景から,限られた輸送需要をいかにして獲得するか,各輸送機関,各企業間の競争は厳しさを増そう。特に,エネルギー高価格時代の今日,輸送コストの増加が外生的に与えられるため,輸送供給サイドでは,合理化,効率化を進め輸送コストの削減に努めることが一層要請される。
第2に,エネルギーの制約が一層強まる。貨物輸送においては運輸部門全体の消費総エネルギーの46.0%(54年度暫定値)を占めている。今後,中・長期的にはエネルギー供給の不安定化,高価格化の傾向は更に強まると思われる。輸送供給サイドにおいては,エネルギー効率の改善等の省エネルギー対策の推進とあわせ,エネルギー効率の高い輸送機関の利用の促進による輸送コストの圧縮に努める必要が高まる。
第3に,都市空間,環境面の制約も強まる。まず,輸送活動に伴う騒音,振動,排ガス等の交通公害問題がある。なかでも,大型トラックの深夜走行等トラックによる騒音,振動,物流拠点への交通量の集中等に対し地域住民からの公害規制の動きが強くあらわれている。今後,国民の環境保全に対する要求水準が厳しくなる中で,円滑な輸送活動を行うためには,公害発生源対策とあわせ周辺環境対策を推進するとともに,地域住民等の理解を求めていく必要がある。
次いで,都市における交通混雑問題がある。近年は産業,立地の地方分散化に伴い,従来大都市圏で社会問題化していた交通混雑が全国的に地方都市等へも波及してきており,地方都市における都市化の進展と相まって,貨物輸送に伴う交通混雑問題が地方においてもクローズアップされている。
また,都市内交通の混雑緩和や輸送の合理化,効率化等をねらいとして整備されてきたトラックターミナル等物流拠点の建設や道路等の整備は,都市空間の不足や地域住民等からの環境保全の要請の高まり等から一層困難となるものと思われる。
第4に,労働力の制約がある。安定成長下の今日,労働力需給は全体として緩和してきているが,輸送関係の職場は肉体労働を主とした現場作業に依存している度合が強い。このまま放置すれば,若者にとって魅力ある職場とはならず,高令化社会の到来を控え,優秀な若年労働力の確保は困難となろう。これを防ぐため,魅力ある職場環境づくりが要請される。
以上のような状況に対応して,今後の我が国の貨物輸送施策全体のあり方としては,我が国経済の安定的な成長と質的に充実した国民生活の実現,充実を図るため,今後の輸送需要の増大及び高度化,多様化等の質的変化に対応しつつ,各輸送機関がそれぞれの特性を十分発揮できる輸送分野を担当し,相互の緊密な連携により我が国全体の輸送コストを低減し,全体として効率的な輸送体系を形成するとともに,エネルギー,空間,環境等の各種制約要因に適合し,安全性確保の要請にも合致する省資源,低公害型の貨物輸送体系の形成に努めることが基本であろう。
こうした観点から,以下で貨物輸送の今後の方向について検討する。
(1) 自動車輸送
自動車輸送(トラック輸送)が,我が国の貨物輸送量全体に占めるウエイトは,54年度,トン数で88.3%,トンキロで39.1%に達し,国内貨物輸送の主要な輸送機関となっている。
また,トラック保有台数も54年度末約1,270万台であり,54年8月策定の「新経済社会七カ年計画」では60年度には1,500万〜1,600万台にのぼると見込まれている。このように,道路整備と相まって,トラック輸送は一層の進展をみせるものと思われる。
しかしながら,エネルギー,環境,交通混雑等の問題に対応し省資源,低公害型貨物輸送体系の形成を図るためには,トラック輸送については,以下の課題に取り組んでいかなければならない。
第1に,国内貨物総輸送量の約26%,年間15億トン強に及ぶ砂利・砂・石材等の骨材輸送対策がある。骨材はトン数で95%,トンキロで80%近くがトラック,主として20万台にものぼるダンプトラックで輸送されている。今後,社会資本の充実,住宅水準の向上等により骨材需要の一層の増大が見込まれ,また骨材採取規制の強化等により,大都市圏への骨材供給の遠隔地化が予想される。今後もこのままダンプトラック輸送に依存することは,交通安全,公害,環境面から問題が多い。少なくも長距離・一次輸送については,空間的制約の少ない内航,骨材輸送に適した特性をもつ鉄道の利用可能性について検討する必要がある。
第2に,都市の廃棄物輸送対策がある。従来から都市廃棄物はトラックにより収集・運搬されてきたが,今後も都市化が進展すると見込まれており,その輸送量はぼう大なものとなろう。これについては,市民や地方公共団体の協力を得ながら,省輸送対策を含め,輸送のあり方を検討することが大切である。
第3に,深夜走行の大型トラックによる騒音,振動は沿線住民の生活環境に大きな影響を与えており,これに対しては交通規制のあり方について検討する必要がある。
第4に,トラック輸送自体の効率化があげられよう。
〔2−1−79図〕は,トラック輸送の指標を示したものである。総じて自家用トラックの実働率,実車率,積載効率は営業用トラックに比べ劣っている。また, 〔2−1−80図〕のとおり,49年度頃から自家用トラックの輸送力は輸送量の伸びを著しく上まわっている。
ちなみに,自家用トラックは54年度末807万台(普通車102万台,小型車705万台)保有されており,営業用トラックの約15.5倍にのぼっているが,輸送量(トンキロ)は自動車全体の43.7%を占めるにすぎない。なお,46年度からは営業用トラックの輸送量分担率(トンキロ)が自家用を上まわってきている。
元来,自家用トラックは,消費者自身あるいは卸小売業者が単に輸送のみならず,広く商業活動と一体となった多様な目的で保有している面もあり,営業トラックにはない自由性,随意性があり,セールスも兼ね得る等営業用トラックでは代替できない分野がある。しかしながら,環境保全や省エネルギー,輸送効率向上によるコストの低減等の国民経済的観点からは,自家用トラック利用の輸送需要の質的要求を見極めつつ,代替可能な分野においては,自家用トラック輸送を営業用トラックに転換することが望しく,そのための方策を検討する必要がある。
また,営業用トラック自体においても,共同輸送,共同配送等積載効率や実車率の向上につながる努力すべきである。
なお,営業用トラック事業においては経営基盤の強化と輸送秩序の改善の課題がある。中小企業が圧倒的に多いこと,また,営業類似行為を行う自家用トラックの存在等のため,絶えず過当競争が生じ適正運賃収受ができないケースもあり,経営基盤がぜい弱な営業トラック事業においては,過積載,過労運転等の不法行為が生じやすい。今後,一層,自家用トラックを含めトラック輸送全体において,過積載の防止を期すとともに,「自動車運転者の労働時間等の改善基準について」(54年12月27日,労働省労働基準局長通達)の遵守の徹底を図り,また,違法行為を行う自家用トラック対策の推進等に努める必要がある。
(2) 国鉄貨物輸送
国鉄貨物輸送は,現在では,国内貨物総輸送量(トンキロ)の9.6%を占めるにすぎない。また, 〔2−1−80図〕のとおり,46年度以降輸送量が減少し,輸送力が輸送量とかい離している。このため,貨物部門の赤字は国鉄全体の赤字の70.1%(53年度)を占め,貨物営業の収支改善が国鉄再建の重要な課題の一つとなっている。しかしながら,鉄道は大量・定型輸送の分野では優れた経済性を発揮し,陸上貨物輸送において穀物,化学肥料等の物資ではトラックを上まわっており,石油製品輸送量は陸上貨物輸送量の半分に近い。したがって,国鉄は輸送力の見直し,ヤード・駅の統廃合等の減量化施策を進めつつ,鉄道特性の発揮し得る大量・定型貨物輸送分野に経営の重点化を図る必要がある。
(3) 内航海運
内航海運は,国内貨物総輸送量(トンキロ)の51.1%(54年度)を占め,我が国産業の基礎物資たる石油,石炭,鉄鋼,石灰石等の輸送の大部分を担い,国内経済において重要な役割を果している。大量性,低廉性の特性をもつ内航海運の今後における課題の一つは,エネルギー高価格下における輸送コストの低減をいかにして図るかである。このためには,船舶の近代化,企業経営の合理化,運航の効率化等について一層の努力が必要であろう。また,エネルギー,空間,労働力,環境保全の各面において有利な特性をもつ内航海運を利用した海上雑貨輸送システムのあり方が検討されている。このシステムが十分に機能するためには,小ロットの雑貨を大量かつ安定的に集配し,荷役,船型を合理化し,配船を効率化することが必要であり,また,貨物の適合性,就航航路等検討すべき問題も多い。しかしながら,今後増大が予想される雑貨貨物輸送を効率的に輸送するためには,倉庫,港湾等海陸交通の有機的連携のための物流拠点の積極的整備と相まって,このような問題の克服に努める必要があろう。
(4) 協同一貫輸送システムの推進
幹線輸送については, 〔2−1−41図〕のとおり,自動車のウエイトが増大している。しかしながら,長距離のトラック運行は,鉄道,内航海運に比べ,環境,エネルギー,運転手労働等で多くの問題があり,このため効率的な協同一貫輸送システムの推進が必要である。その際,トラックと他の輸送機関がそれぞれの特性を活かしつつ,十分な連携を保つことが必要であり,これら輸送機関の協力・協調体制の充実が不可欠である。
既に,40年代半ば頃から鉄道又は海運の大量輸送性と自動車のもつ機動性,柔軟性を組合せて,相互の優位性を十分活かしたフレートライナー,カーフェリーのような協同一貫輸送システムの整備が図られてきた。
まず,国鉄コンテナ輸送は,44年4月の東京-大阪間のフレートライナーの運行開始,取扱区間の拡大,私有コンテナ制度の確立等により, 〔2−1−81図〕のとおり,48年度1,384万トン,国鉄貨物輸送量の7.9%と急速に伸びたが,49年度から52年度までは不況等により減少したものの,53,54年度は増加傾向にある。この間,フレートライナー輸送はコンテナ輸送の50%台のシェアを占めている。省エネルギーの観点からも,その利用促進を図り,今後とも,荷主のニーズに十分適合したフレートライナーの充実に努める必要がある。
次に,長距離フェリーによる自動車航送量の推移をみると,43年8月に我が国で初めて小倉-神戸間に開設されて以来, 〔2−1−82図〕のとおり,48年度までは輸送量が急増したが,49,50年度には停滞し,51年度以降はトラック航送の高い伸びに支えられ増加しつつある。特に,45年度には航送台キロで22.7%にすぎなかった無人車航送の割合が逐年増加し,54年度においては62.6%を占めている。長距離フェリーは,陸上ルートの短絡的航路が多いこと,荷役時間が短いこと,交通渋滞を避け得ること等により,輸送時間の短縮,車両消耗・荷傷みの減少,交通公害,事故の防止,特に無人車航送の場合には人件費の節減,労働力不足の解消等によるコストの低減等の利点があり,今後ともその利用の促進を図る必要がある。
(5) 物流拠点の整備等
貨物輸送の円滑化,効率化を図るためには,貨物の積替え,保管等を行う物流拠点の整備とその機能の向上が不可欠である。
まず第1に,海陸輸送の有機的連携を図るため,港湾においては物資別専門埠頭,コンテナ埠頭等の港湾施設の建設や複合的ターミナルの整備が進められており,荷役作業の一貫化,省力化,効率化が進展しているほか,また,集団化倉庫の建設等により,海陸輸送の結節機能の強化・充実を図っている。
次に,幹線道路輸送と都市内輸送の結節点としてのトラックターミナルの整備も30年代後半から進められてきた。これは,都市の外周部に配置され,大型車両による長距離幹線輸送と小型車両による都市内輸送に分離して,大型車の都市内走行の削減,都市にふさわしい小型車両によるきめ細かな輸送サービスの提供等により輸送の効率化を図るものである。41年の「流通業務市街地の整備に関する法律」の施行と相まって, 〔2−1−34図〕のとおり,急速にトラックターミナル整備が行われた。今後,輸送需要の伸びの鈍化を勘案しつつ,安定成長期にふさわしい適正規模の施設を全国的なネットワーク整備の観点から,効率的に配置していく必要がある。
(6) 都市内物流の合理化
〔2−1−83図〕のとおり,東京,大阪のような大都市における貨物輸送量は,47年度をピークに減少に転じたものの49年度を底に再び増加傾向にある。また,大都市の全国に占める貨物輸送量の割合は,産業等の地方分散に伴い低下しつつあるものの,なお相当なものがある。これら大都市における貨物輸送の90%程度は,自家用トラックを主体としたトラックが担っている。鉄道,海運,航空で流出入する貨物であっても末端輸送はトラックに依存せざるを得ない。
人口・産業の都市集中等,都市の成長につれ都市内物流を困難とする条件が生まれている。すなわち,都市中心部等に巨大な商業集積が生れるとともに,卸売・メーカーの物流拠点の集中と小売業の分散や形態の多様化,取引の小口化,流通在庫の分散,消費者の購買行動の多様化等が進んだ。このため,都市内輸送トリップの増加と集中,トリップ長の増大等による交通渋滞等をはじめ交通状況が悪化してきた。特に,東京,大阪等の大都市における交通混雑ば依然として深刻であり,加えて騒音等交通公害の改善も容易に進まない状況である。こうしたことから,トラックの輸送効率は悪化しており,円滑な都市機能の維持,都市生活の充実のため,都市内物流の合理化の一層の推進が必要である。これの改善策の一つとして,共同輸送や共同宅配システムの推進がある。これは,大都市における集配輸送の合理化,積載効率の向上,自家用トラック等自動車交通総量削減,物流コストの低減等をねらいとし,大都市の一定地域における複数の荷主に係る貨物について,複数のトラック事業者が共同して都市内輸送を行うシステムである。既に全国各地で実施されており,今後とも普及促進の必要があろう。
また,現在,商店街・ビジネス地区等においては,集配送貨物の大部分は狭い路上で積卸作業が行われているが,道路混雑の緩和や交通公害防止の観点等から路外で効率的な積卸しが行われることが望ましいので,輸送の末端に共同荷物授受施設の整備の検討も必要である。
(7) 小量物品輸送
従来,主に一般国民が荷主となる小量物品については,国鉄手小荷物やトラックの小口混載貨物,郵便小包として輸送されてきたが,この輸送サービスは,迅速性,確実性,戸口性等の面で必ずしも十分荷主の要望に沿ったものとはいえなかった。一方,48年以降の不況を契機にトラック事業者サイドでは,従来の企業向けロット貨物重点から,一般家庭向け小量物品等小口貨物輸送をも自らの事業分野として拡大しようとする動きが出てきた。その際,荷主のニーズに十分対応したきめ細かな輸送サービスを開発,提供してきた。このため, 〔2−1−84図〕のとおり,宅配便は50年度約3万6,000個から54年度約2,779万3,000個にまで急成長している。一方,国鉄手小荷物は49年度(ピーク時)約8,155万6,000個から逐年減少し,54年度にはピーク時の40%減となっている。これは,宅配便が,国鉄等既存の輸送サービスに比べ,所要時間,サービス等の点で優れ,荷主のニーズによく合致したためである。今後,国鉄手小荷物輸送のあり方が課題となろう。
また,小口貨物を中心に荷主のニーズに即した輸送サービスとして,近年,軽車両による軽自動車運送業等のサービスの提供もあり,また一般家庭の引越貨物輸送にも新たな専門的輸送サービスの動きがでている。
なお,過疎地における小量物品輸送のあり方についても検討する必要がある。
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