1 船員労務官による監査


  船員法,最低賃金法,賃金の支払の確保等に関する法律等の施行を確保するため,全国の10海運局及び59海運局支局並びに沖縄総合事務局に,125人の船員労務官を配置し,船舶その他の事業場の監査等を実施している。
  昭和54年においては,漁船,小型船,タンカー及び旅客船に対する発航前検査の励行,船員労働安全衛生規則に定める安全衛生基準の遵守並びに船員の給料その他の報酬等の支払の確保に重点を置き,特に旅客船については,各種操練の実施及び船内巡視の励行等,運航安全の確保に関する監査を実施した。
  54年の監査実績は 〔II−(II)−12表〕のとおりであり,船員法適用対象の船舶,事業場の約32%に対して監査を実施した。

  違反のうち件数の多い項目は,安全担当者の業務関係59件,危険物積載場所の安全標識表示関係58件,衛生担当者の業務関係52件,接触等からの防護関係48件,雇入契約の公認関係48件等で,全体の59%は船員労働安全衛生規則違反である。また,給料その地の報酬の不払については,前年に比べ件数,船員数,金額とも減少し,37件,812名の船員について5億4,896万円の不払があったが,船員労務官の指導等によりこのうち26件が解決し,692名の船員について4億5,548万円の支払が行われた。2労働条件の改善のための指導漁業,内航海運業等中小企業が多い業界においては,経営基盤が脆弱であるため,一般に労働条件の水準が低く,労務管理体制も整備されておらず,このことが,ひいては船員法等の遵守に当たっての支障となるとともに,各種の労働災害を発生させる要因ともなっている。このような事態を改善するため,漁船及び小型船に乗り組む船員の労働条件に関する基準を定め,船舶所有者及び船員に対する行政指導を行ってきたところであるが,54年度においては,前年度に引き続き,特に漁船に重点を置き,休暇の付与の改善,食料支給の改善,固定給部分の改善,雇用の継続化等について,各業種の特性,経営の実情等を考慮のうえ実態に即応した指導を行った。また,労務管理体制の確立を図るため,漁船船員及び小型船船員を雇用する中小企業者の団体を対象として,労務担当者の設置及び労務管理部門の組織化を指導奨励するとともに,安全衛生管理に重点を置いた労務担当者教育講習会を開催して,労務管理に関する必要な基礎理論,実務知識の習得等その資質の向上を図った。3最低賃金の決定状況船員の最低賃金は,最低賃金法の定めるところにより決定されているが,54年度の決定状況は 〔II−(II)−13表〕のとおりである。現在,船員の最低賃金は,旅客船,内航鋼船及び木船船員について決定されているが,漁船船員については決定されていない。そこで,55年2月,船員中央労働委員会は,運輸大臣に対して,当面,「沖合底びき網漁業」,「大中型まき網漁業」,「遠洋まぐろ漁業」及び「大型いかつり漁業」の4業種に従事する漁船船員について最低賃金を決定することが適当である旨の建議を行った。
  これを受けて,運輸省は,上記4業種の漁船船員の最低賃金を決定することとし,そのための手続を進めているところである。


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