4 監視取締り及び指導の強化


  海上保安庁は,我が国周辺海域における船舶からの油の排出や臨海工場からの排出水等について監視取締りを行っており,特に,東京湾,伊勢湾,瀬戸内海及びこれらに近接する海域,船舶航路筋,本州南岸から南西諸島に至るタンカールート海域等汚染発生のがい然性の高い海域においては,巡視船艇による監視のほか可能な限り航空機を投入し,効率的な監視取締体制によって対処している。その結果,54年には,1,772件の海上公害関係法令違反を送致したが,これらの不法投棄事犯の態様をみると投棄者のほとんどが遵法意識に極めて乏しいものであり,また,監視取締りの目を逃れるため,手口がますます巧妙,悪質化している。55年3月に摘発した大型タンカーからの廃油投棄事件は,タンククリーニング作業を請け負った作業会社の従業員等が夜間ひそかに大量のスラッジを投棄していたものであり,社会的に大きな問題となった。
  このため,海上保安庁は,必要な情報の収集に努めるとともに,タンカールート海域及びこれに接続する四国沖合のタンククリーニング海域について,従来からの航空機による監視取締りに加え,ヘリコプターとう載型巡視船の配備を増強する等監視取締りの強化を図った。
  また,運輸省は,この種の事件の再発を防止するため,日本船主協会等海運関係団体に対し,船舶の油による海洋汚染の防止体制の強化について通達するとともに,更に,大型タンカーの所有者等に対し,油濁防止規程の励行等船内作業の適正な実施,タンククリーニング作業に関する請負作業契約の適正化,同請負作業の監督体制の確立・強化,船員及び社内関係者に対する海洋汚染防止に関する教育の徹底等について,必要な改善を行うよう強く指導した。
  このほか,海上保安庁は,毎年期間を定めて,船舶の油取扱い作業時における漏油事故の防止を主眼とした海洋汚染防止指導を推進するとともに,油排出事故防止のための基本的事項を内容とするパンフレットを作成,配布する等,あらゆる機会を利用して,海洋汚染防止思想の普及,知識・技能の向上,関係法令の周知徹底を図っている。
  また,海洋汚染防止モニター制度を活用して,汚染の発見通報や汚染防止についての周知啓蒙等,地域の実情に応じた防止活動に当たっており,海上保安定に対する汚染の通報は,54年度には1,625件であった。
  更に,外国船舶に対しては,汚染事故が多いことにかんがみ,我が国の関係法令の要旨,海洋汚染防止のための具体的対策等を内容とする数か国語のパンフレットを作成,配布する等,漏油事故対策について指導を行っている。


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