第3節 交通と気象業務
航空,海上,陸上の各種交通機関は,暴風雨,波浪,積雪,霧等によって運航に重大な影響を受けることが勢いので,一般向けの気象情報のほか,それぞれの目的に適合した情報を作成し提供している。
航空交通の安全確保を目的として,関係機関に提供される気象情報は,航空機が経済的かつ規則正しく運航されることにも寄与する。主要空港には航空地方気象台又は航空測候所を,その他の空港には地方気象台等に所属する空港出張所を設置し,航空気象観測通報,飛行場予警報,飛行のための予報,一般の予警報の伝達・解説等,航空機の利用に適合する気象情報の提供業務を実施している。また,航空局の航空交通管制部が行う業務に直接協力するため,札幌,所沢,福岡及び那覇には,管制気象課を置き,必要な気象情報を提供している。昭和54年度においては,既設航空気象官署の観測測器及び通信機器を強化・整備するとともに,新たに新東京国際空港及び千歳空港にそれぞれ空港気象レーダーを整備した。また,下地島空港(沖縄県)の公共用化に伴い,新たに航空気象業務の整備を行った。
海上交通については,20海里ぐらいまでの沿岸海域のために,各府県予報区ごとの予報,注意報,警報をラジオ,テレビ等を通じて提供し,300海里ぐらいまでの海域については,本邦周辺を12の地方海上予報区に分け,地方海上予報,地方海上警報を各担当気象官署が海上保安庁の通信系やラジオを通じて提供している。また,外洋については,全般海上警報を無線放送,無線模写放送によって提供している。
54年度においては,海洋気象観測船の観測精度及び観測能率を高めるための測器の近代化等を行ったほか,東海地域及び南関東地域の6か所の検潮所資料を気象庁へテレメーターで伝送して常時監視体制を整備し,更に,口之津検潮所(長崎県)の施設整備を行い,検潮業務を強化した。
沿岸の海上交通の安全確保を目的とした沿岸波浪観測網及び霧観測装置の展開を行っており,54年度は福江に沿岸波浪観測装置を整備した。
なお,外洋波浪の情報としては,実況図に加えて数値予報による予想図を無線模写通報している。
陸上交通については,日本国有鉄道に対しては取極めに基づいて,列車の運行に影響の大きい気象現象に関して地区ごとに鉄道気象通報を実施し,民鉄,バス等に対しては,注意報,警報の周知徹底を図るとともに,気象情報の利用方法の指導等を行っている。更に,これらの気象情報については,連絡会議等を通じて利用者との協議を行い,改善に努めることとしている。
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