2 貨物輸送


  世界貿易は1970年代にドルベースで5倍に拡大し,世界経済の相互依存はますます強まっている。このような世界貿易の拡大に伴い,国際貨物の輸送量は,海上輸送(トンマイルベース)は70年代に1.9倍,航空輸送(トンキロベース)は同2.7倍と急速な伸びを示している。
  近年の海運及び航空による国際貨物輸送の動きをみると,75年と80年にそれぞれ伸びが落ち込んでいる。75年は,第1次石油危機を契機に世界経済は戦後最大の不況に陥り,世界貿易が縮小した年である。また,第2次石油危機は世界経済に大きな影響を与え,80年に世界貿易は停滞した。
  80年の世界の海上荷動き量は,トン数ベースで過去の最高水準であった79年に比べ3.3%減の36億3,200万トンとなり,トンマイルベースでは5.5%減の16兆7,100億トンマイルとなった。品目別では,石油及び鉄鉱石の減少と石炭の増加が目立っている。一方,航空輸送は,対前年比6.7%増(79年同11.8%増)の202億トンキロとなった。
  世界貿易に占める我が国の貿易割合(79年)は,金額ベースで輸出6.9%,輸入7.2%と高く,また,我が国自体としても大きく貿易に依存し,貿易は我が国経済の生命線である。このような貿易立国である我が国にとって,輸出入貨物の輸送を担う海運と航空の役割は,最近の国際情勢の不安と緊張が高まるなかで,経済安全保障の観点からもますますその重要性を増している。
  貿易量の増大に対応して,我が国の海上荷動き量はトン数ベースで70年代に1.6倍に増大し,航空輸送量も同じく5.0倍と量的には小さいものの著しい成長を遂げた。
  こうしたなかで,我が国の輸出入構造は次第に変化しつつある。輸出においては,素材型産業の品目が低下し,一般機械,電気機械,輸送機械,精密機械等を中心とした加工型産業の品目のウエイトが高まっている。これは,我が国の産業構造の変化に対応し,輸出構造も高度加工型,知識集約型へ変化しているためと考えられる。このような輸出構造の変化に対応し,海運の輸送構造も,乗用車,機械類,電気製品のウエイトが高まっている 〔1−1−9図〕。また,航空は電気機械,精密機械等の伸びが著しい 〔1−1−10図〕

  一方,輸入においては,原油,鉄鉱石,石炭等の工業用原材料,燃料が依然として数量的には大きな割合を占めているが,そのなかで,石油危機後の原油輸入量の減少が目立っている。また,航空輸送は適性貨物が少ないこともあって,輸出に比べて伸びが小さいが,そのなかでも食料品等が大きく増加している。
  なお,地域別海上貿易量の推移をみると, 〔1−1−11図〕のとおり,輸出ではアジア,中近東の増加及び欧州の低下が目立ち,輸入ではアジアの増加と中近東の低下が目立っている。

  次に,昭和55年度の我が国をめぐる海運及び航空による国際貨物輸送活動をみると,その概況は次のとおりである。
  まず,55年度の外航海運による我が国の国際貨物輸送量(トン数ベース)は, 〔1−1−12表〕のとおり,輸出が前年度に比べ1.2%減(54年度同4.3%増),輸入が同1.8%減(54年度同6.1%増)と輸出入とも前年度水準を下まわった。

  品日別では,輸出は,自動車が対前年度比26.0%増と大幅に増加したほか,機械類,電気製品が20%を超える伸び率となった。しかし,鉄鋼,セメントの減少が目立つ。一方,輸入は,石油代替エネルギーとして需要が増加している石炭が対前年度比22.9%増と大幅に増加したが,木材は住宅需要の冷え込み等により同17.5%減と大きく減少した。このため,乾貨物全体では,対前年度比4.0%増(54年度同9.2%増)にとどまった。また,油類は,石油価格高騰による需要の減退等により,原油が対前年度比9.5%減と大幅に減少するなど,全体で同8.5%減(54年度同2.6%増)とマイナス成長に転じた。この結果,輸入に占める分担率は,前年度に比し乾貨物は3.1ポイント増の56.6%,油類は3.1ポイント減の43.4%となった。
  また,我が国商船隊(外国用船を含む)の輸送活動をみると,輸出は積取比率の高い自動車の貿易量の増加等により4,185万トン,対前年比5.1%増(54年同10.0%増),輸入が原油等の海上貿易量の減少等から4億3,387万トン,同3.9%減(54年同9.7%増)となった。また,三国間も,原油等の海上荷動き量の減少等から7,690万トン,同5.3%減(54年同9.8%減)となった。これにより,我が国商船隊の積取比率は,前年に比べ輸出が2.4ポイント増の54.7%,輸入が1.4ポイント減の71.6%となった。このうち,日本船の輸送量をみると,輸出が定期船,不定期船で減少したため,全体でも対前年比1.0%減とわずかではあるが減少し,輸入については油送船,定期船で大幅に減少したことから,全体でも同5.5%の減少となった。その結果,日本船の積取比率は,輸出では20.5%とほぼ前年水準並みとなり,輸入では日本船の積取比率の大きい油類の大幅な減少が大きく影響し,1.4ポイント減の37.4%となった。
  次に,55年度の国際航空における我が国の貨物輸送量(トン数ベース)をみると,輸出は前年度に比べ15.6%増(54年度同22.4%増),輸入は同0.5%増(54年度同15.7%増)と前年度水準を上まわったものの,輸入の伸びが大幅に鈍化したことが注目される。このうち,我が国航空企業による輸送量も,輸出が対前年度比13.9%増(54年度同31.7%増),輸入が同4.2%増(54年度同23.1%増)と伸びは大幅に鈍化した。これにより,我が国航空企業による積取比率は,前年度に比べ輸出が0.5ポイント減の34.7%,輸入が1.4ポイント増の39.8%となった。


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