1 航空運送事業


  航空運送事業には定期航空運送事業と不定期航空運送事業があるが,昭和56年7月1日現在で,定期航空運送事業の免許を受けているものは日本航空,全日本空輸,東亜国内航空,南西航空,日本近距離航空及び日本アジア航空の6社であり,不定期航空運送事業については,定期航空運送事業を兼営してチャーター便等の運営を行っている上記6社に加え,航空機使用事業と兼営して遊覧飛行等を行っているものが35社あり,合計41社が免許を受けている。
  なお,日本航空については近年の変動する国際情勢に対応して,より機動的,弾力的な事業運営を行うことが適当であり,こうした状況を踏まえて,56年4月日本航空株式会社法を改正し,同社について政府助成の適正化を図るとともに,規制の緩和を行い,民間の活力を十分発揮し得るよう措置した。

(1) 収支状況

  原油価格の高騰に伴う航空燃料費の増加,航空機燃料税など空港整備費負担の増加等を理由として,54年10月23日,日本航空ほか国内定期航空運送事業者5社から国内航空運賃等の改定申請があり,55年3月31日に平均改定率23.8%でこれを認可した。55年度においては,この国内航空運賃改定が増収に寄与したこともあって,定期航空運送事業者の収支は次のようになった。

 (ア) 日本航空

      日本航空の55年度の収支は 〔III−11表〕のとおりである。営業収入は前年度に比べて15.1%増の6,544億700万円で,総収入では14,8%増の6,698億8,200万円となったのに対し,総費用は6,654億6,300万円で営業段階で95億300万円の利益を計上した。対前年営業費用増加額762億円のうち燃料関連費用は479億円で63%を占めている。税引後利益は34億600万円となり,民間所有の株式に対し8分配当を継続した。

      55年度の国際線の営業収入をみると,太平洋線の積取比率は低下したものの,北欧線の積取比率が向上したこと等により,旅客輸送量は432万人(対前年度比2.1%増),224億2,242万人キロ(同1.9%増)と増加し,旅客収入も3,318億円(同11.2%増)に増加した。一方,貨物輸送については,供給力の拡大により,輸送量で14億1,958万トンキロ(同8.8%増)となり,収入額は1,027億1,200万円(同28.1%増)と大幅に前年度を上まわった。
      国内線については,旅客輸送量は874万人(対前年度比7.5%減),71億7,600万人キロ(同5.8%減)となった。旅客収入は,1,569億5,200万円(同15.9%増)となった。一方,貨物は輸送量9,870万4,000トンキロ(同3.6%増)となり,収入も104億8,100万円(同21.5%増)となっている。

 (イ) その他の定期航空会社

      日本航空を除く定期航空運送事業者別の収支状況は 〔III−12表〕のとおりである。

      全日本空輸の旅客輸送量は,2,242万人(対前年度比2.4%減),172億3,612万人キロ(同1.0%減)となった。営業収支については,営業収入が3,773億2,400万円(同22.6%増)であったのに対し,営業費用は3,763億8,300万円(同18.6%増)となり経常利益は47億5,300万円を計上した。
      東亜国内航空の旅客輸送量は,737万8,700人(対前年度比0.9%減),36億9,800万人キロ(同1.0%増)となった。営業収入は976億1,200万円(同22.6%増)となったのに対し,営業費用は963億7,900万円(同16.8%増)となり,経常利益は16億1,500万円の赤字を計上した。
      南西航空の営業収入は117億8,600万円(対前年度比30.0%増),営業費用は109億2,100万円(同17.9%増)となり,経常利益は4億6,800万円を計上した。
      日本アジア航空の営業収入は269億2,500万円(対前年度比13.4%増),営業費用は276億4,400万円(同17.1%増)となり,経常損益は8億5,000万円の赤字を計上した。
      また,日本近距離航空の営業収入は38億3,800万円(対前年度比128.0%増),営業費用は40億1,500万円(同75.3%増)となり,経常段階では引き続き赤字を計上し,その額は2億5,600万円となった。
      国内航空運送事業の最近7年間の利益率の推移は 〔III−13図〕のとおりであるが,55年度は売上高営業利益率,売上高経常利益率はそれぞれマイナス0.1%,マイナス0.3%であった。

(2) 離島辺地輸送対策

 (ア) STOL機購入費補助

      47年度から,離島における空港の利用及び整備に資するため,離島に就航する短距離離着陸機(STOL機)の購入に要する費用の一部を空港整備特別会計から補助する制度が設けられている。

 (イ) 離島航空路線に係る普通着陸料及び航行援助施設利用料の割引制度

      離島航空路線が採算の悪い路線であることにかんがみ,離島航空の割高なコストを軽減しその維持確保を図るため,54年度からYS-11型機又はSTOL機を使用して離島航空路線を運航する場合,普通着陸料及び航行援助施設利用料を割り引く制度(YS-11型機は1/2,STOL機は3/4を割り引く)が設けられた。更に,55年度からジェット機も同制度の対象とされ(割引率1/3),対象路線も本土-沖縄線まで拡大された。

 (ウ) 離島航空路線に係る通行税の5%軽減措置

      離島航空路線は,輸送需要が限られていること,使用機材の生産性が低いこと等から,前述のような助成措置を講じてもなお他路線に比し割高な運賃設定を余儀なくされている。このような状況にかんがみ,離島住民の運賃負担の軽減と地域の振興を図るため,55年度から離島航空路線に係る通行税が10%から5%に軽減された。


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