2 異常海難防止システムの総合研究開発


  運輸省では,運輸に関する重要な技術開発課題に対処するため,57年度から逐次テーマを定めて,総合的な研究開発体制の下に研究開発を推進することとし,57年度から5か年計画により「異常海難防止システムの総合研究開発」を実施することとなった。
  本州東方海上いわゆる野島崎沖は,日本と米大陸を結ぶ航路筋に当たり,油類を除く日本の貿易量の35%程度(M/T)が本海域を通過しており,我が国の経済活動にとって重要な海域の一つとなっている。
  本海域は冬季の気象,海象条件が厳しく,今までの知見では予期し難い異常波浪等によるものと思われる海難事故が発生している。
  運輸省においては重大な海難についてそれぞれ調査委員会等を設け,海難事故原因の推定及び今後の海難防止のための対策について検討を行ってきたが,気象,海象,船舶の性能等を総合的に判断し安全運航に資するため,波浪中における船舶運航マニュアルの整備が今後の重要な課題となっている。
  したがって,今般,当該海域での異常気象・海象下における船舶の海難防止に資するため,野島崎沖合波浪の実態観測を始め,船舶堪航性,船舶運航の各分野を総合的に研究することにしたものであり,57年度から61年度までの5か年で 〔1−4−6図〕の研究体系に沿い,船舶技術研究所,港湾技術研究所,気象研究所等の運輸省の附属試験研究機関を中心に,省内関係局(庁)はもとより民間の技術力も積極的に活用して取り組むこととしたものである。

  57年度は,波浪特性データ(波形,波向等)を長時間連続観測し記録でき,かつ,気象衛星「ひまわり2号(GMS-2)」を経由してデータを伝送できる波浪観測ブイの製作,及びブイに搭載する波向計の開発,更に弾性模型船を用いた波浪衝撃荷重の測定等を行うこととしている。


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