4 今後の課題


  安定経済成長時代を迎え国民生活の質的向上を図るため運輸関係技術の開発に課せられた課題は多い。
  まず第1に,モビリティーの確保のためには新しい輸送手段,輸送システム等の技術はもとより,建設コスト,運営コストの低減を図る技術の開発をより一層推進する必要がある。更に各輸送機関による騒音,振動,排気ガス等によって引き起こされる公害問題,その他各種の安全問題,エネルギー消費の節約等については新動力の開発,新素材の利用,自動制動装置等の開発等により対処していくことが必要である。
  狭い国土の有効利用と生活空間の拡大,生活環境の整備のためには沖合人工島等による海洋空間の利用技術の開発を進めるとともに,後世に豊かな自然環境を持つ海洋を伝え残していくための海洋浄化技術,海洋汚染防止技術についてもより一層その開発が期待される。
  また,エネルギー資源,食料等の海外からの安定輸送と増大する航空需要に対処するため小型漁船を含めた船舶,航空機を対象とした人工衛星による航行援助システム,航空管制システムの確立を図ることが必要である。
  一方,従来までに培ってきた船舶建造技術,港湾建設技術についてはより一層の技術開発を図ることが必要である。特に船舶技術においては経済性,安全性の飛躍的に高い運航を可能とする船舶の知能化,高信頼度化を目指した技術開発を,港湾建設技術においては大水深海域における港湾構造物の設計施工技術,波エネルギーの利用技術,耐震構造物の設計施工技術等を積極的に推進する必要がある。
  更に,人工衛星等からのリモートセンシングによる海洋調査技術,その他海洋開発関係の諸技術の開発も必要不可欠である。
  地震,台風,豪雨,豪雪などの自然災害に対しては,我が国のような高密度社会においてはその及ぼす影響が大きいことから,なお一層の予測,予報技術,非常時の諸対策技術等の開発が望まれる。
  このように運輸関係技術開発課題は広範囲にわたっているとともに,国民的要請の高いものばかりであり,その期待に応えるため,積極的に開発推進する必要がある。
  これらの技術開発は国及び民間における研究開発を通して技術の蓄積を図ってきたところであるが,特に大型新技術の開発に当たっては開発リスクが大きいため,民間独自の開発には限界があるので,官民一層の協力の下に,適切な開発体制の下で効率的に推進することが必要である。


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