第2節 民間設備投資


  昭和57年度の民間設備投資は中小企業の停滞が続くなかで,大企業にも頭打ちの気配が現われたため増勢が著しく鈍化し,「法人企業統計季報」(資本金1,000万円以上の企業を対象・抽出)によれば,全産業で1.1%増と極めて低い伸びを示すにとどまり,製造業では52年度以来5年ぶりの減少となった 〔1−2−10図〕

  (5年ぶりに減少した運輸関係設備投資)
  運輸省の調査による所管事業の設備投資実績は 〔1−2−11表〕のとおり,工事ベースで1兆4,178億4,000万円,対前年度比9.6%減と運送業部門の落ち込みにより,5年ぶりの減少となっている 〔1−2−12図〕

  部門別にみると,投資総額の80%を占める運送業部門では対前年度比13,5%減と5年ぶりの減少となり,過去10年間で最も大幅な落ち込みを示した。業種別にみると,トラック運送業,ハイヤー・タクシー業,内航海運業(旅客船によるものを含む。),民営鉄道業が増加し,通運業,航空運送業,倉庫業,外航海運業,港湾運送業,バス業は減少した。57年度に増加した業種の増加要因をみると,トラック運送業はターミナル,荷役設備に対する投資増,ハイヤー・タクシー業は修理設備,車庫に対する投資増からそれぞれ増加しており,自動車に対する投資はかえって減少している。内航海運業も船舶の更新等に対する投資増から増加している。一方,航空運送業は航空機,整備施設に対する投資の大幅な落ち込みで30%台の減少を示し,ここ数年間,大幅増を続けていた外航海運業は鉱石船,石炭船等の専用船建造の落ち込みにより20%近く減少し,5年ぶりの減少となった。

  製造業部門は,対前年度比11.3%増と伸び率は低下したものの各業種とも増加した。このうち造船業は10%台の伸びを示したものの伸び率は大幅に鈍化しており,好況時の水準からはほど遠い状態となっており,投資動機では合理化・省力化,更新投資が大きなウエイトを占めている。
  その他部門は対前年度比18.6%増で,航空関連施設業がターミナル施設等に対する投資減により大幅減となったほかは,いずれも増加した。このうちホテル業は,新築,増築,防災設備に対する投資の増加により前年度に引き続き大幅な増加となった。
  (低迷する能力増強投資)
  資本金階級別にみると,資本金1億円未満の中小企業は対前年度比14.7%増と増加になったのに対し,資本金1億円以上10億円未満の企業は対前年度比3・3%減,10億円以上の大企業は同13.5%減と減少に転じ,特に運送業で大企業の投資手控え傾向が強かった。
  投資動機別にみると,合理化・省力化投資が35.4%増であったが,能力増強投資は14.8%減で全体に占める率も3.2ポイント減の51.6%となった。
  資金調達内訳を支払いベースでみると,内部資金は前年度比10.0%減,外部資金は同7.9%減となり,総投資額に対する割合は前年度に比べ外部資金が0.6ポイント増の67.1%となった。このうち,民間及び政府金融機関の占める率は68.9%と依然大きいが,増資による資金調達の増加が目立っている 〔1−2−13図〕


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