4 運輸における不況対策


(1) 造船業の操業調整

  我が国造船業は,設備処理等の一連の不況対策と海運市況の好転等が相まって先の不況から徐々に回復の兆しをみせていたが,その後第2次石油危機を契機とする世界経済の停滞,省エネルギーの一層の進展等により,造船市況は急速に冷え込み,再び厳しい事態に直面しつつある。
  また,国際的にも,58年2月OECDにおいて造船不況の克服を図るため「造船政策に関する一般指導原則」が改訂決議され,加盟各国はこの原則に基づき造船能力の抑制,操業の調整等所要の措置をとることとなった。
  このような状況の中で,海運造船合理化審議会は,58年3月当面の対策のひとつとして,低操業体制下における経営・雇用の安定及び国際摩擦の回避を図っていくため,適切な操業調整を実施する必要がある旨の提言を行った。
  運輸省は,同審議会の提言を踏まえ,58年4月原則として総トン数1万トン以上の船舶を建造しうる設備を有する企業33社に対し各社別に58及び59年度の操業量の上限を示して操業調整の実施を勧告した。これによる各社別の操業量の合計は,58年度441万CGRT(標準貨物船換算トン)(操業度平均74%),59年度406万CGRT(操業度平均68%)である。

(2) 内航海運の不況対策

  内航海運においては,55年度から57年度の3年間連続して,輸送実績が減少し,深刻な不況に直面している。このような状況を克服するため,運輸省は,過剰船腹の処理対策の目標(削減すべき船腹量)を宣明するものとして,海運造船合理化審議会の答申を受けたうえ,58年3月に内航船腹量の最高限度(以下「最高限度量」という。)の設定を行った。最高限度量は,貨物船については,57年9月末の現有船腹量より3万3,000総トン(7万重量トン)低い190万3,000総トンに,油送船については3万2,000総トン(7万立方メートル)低い98万5,000総トンに設定されている。なお,最高限度量の設定は,44年度以来13年ぶりのことであり,設定期間は58年3月28日より1年間となっている。
  最高限度量の設定を受け,業界においては,日本内航海運組合総連合会を中心として,過剰船腹の処理,小規模事業者の集約再編成等の構造改善,過当競争の防止等の運送事業者対策等からなる不況対策を実施することとしている。
  なお,雇用対策として,船員の雇用の促進に関する特別措置法,特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の適用等の措置を講じている。

(3) 港湾運送業における構造改善対策

  最近における海上荷動き低迷等により港湾取扱貨物量は56年度に引き続き57年度も減少し,いかだ運送,はしけ運送を中心として港湾運送全体が構造的な不況に陥っている。そのため,57年11月には,新たに「いかだ構造改善対策分担金」を認可料金として設定し,いかだ運送事業者の経営基盤の強化と雇用の安定対策の原資として活用していくこととした。また,はしけ運送については,57年度に第3次のはしけ買上げを実施し,適正な需給バランスの回復,経営基盤の強化を図った。
  さらに,このような各種の構造改善対策を側面から支援するため,57年12月には財団法人港運構造改善促進財団が設立され,前述のいかだ構造改善対策分担金等の拠出金をもとに,事業の集約統合のための転廃業見舞金の支給やはしけ買上所要資金の融資,さらには港湾労働者の雇用対策を行う団体に対する政的援助等港湾運送業の構造改善のための諸措置を実施することとした。


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