3 都市新バスシステム等の整備


 (望まれるバスの再生)
  都市におけるバス輸送は,モータリゼーションの進展等により走行環境が悪化するとともにバスの利便性が相対的に低下したことから需要が減少し,このため採算性が悪化し,これがサービス改善を遅らせることとなり,さらにバス需要を減少させるという悪循環に陥っている。一方,都市交通においては,円滑なモビリティを確保するとともに省空間,省エネルギー等の要請に対応していくためには,バスを魅力ある交通機関として再生していくことが必要である。こうした観点から,運輸省は,都市基幹バス,都市新バスシステム等に対して助成を行うことにより,都市におけるバスサービスの改善方策を強力に推進している。
 (成果を上げた都市基幹バスの整備)
  都市基幹バスは,都市交通体系上根幹となる主要なバス路線において,バス専用レーンの設置と併せて利用しやすい近代的な車両及び停留所施設を整備することにより,バスサービスを充実し,バス利用の促進を図ることを目的として56年度に名古屋市において初めて整備されたものであるが,運行速度の向上,バス輸送の利便性,快適性の向上等により,輸送人員を増加させるという所期の成果を着実に上げている。
 (進む都市新バスシステムの整備)
  さらに,バスサービスの改善方策の集大成として,都市基幹バスシステムを改善し,これにコンピュータを利用したバス路線総合管理システムを導入することでシステム全体のグレードアップを図ったものが都市新バスシステムであり,その整備について,58年度から助成措置を講じている。
  都市新バスシステムは,都市交通体系上根幹となるべき主要なバス路線において,バス専用レーンを設置し走行環境を改善するとともに,次のような施設の整備を行うものである。
 @ バス路線総合管理システムを導入し,コンピューター制御による車両運行の中央管理による定期運転の確保等を図るとともに,バスロケーションシステムの整備により停留所におけるバス接近表示を行い,バス待ちのイライラを解消させる。
 A 低床,広ドア,冷暖房,大型窓等を備えた都市型車両の導入により,バス輸送の快適性を向上させる。
 B シェルター,電照式ポールを備えた停留所施設の設置によりバス輸送の利便性を向上させる。
  58年度は東京都及び新潟市において導入され,利用者の利便性,快適性を高めるなどの成果をあげている。特に東京都においては,輸送人員が10%〜40%程度従前に比べ増加している 〔2−3−4図〕

  なお,59年度には名古屋市及び金沢市において整備されることになっている。
  バスを魅力ある交通機関として再生していくにあたっては特効薬はなく,また,全てのバス路線について都市新バスシステムのような総合的なサービス改善対策が講じうるものではないことから,バス専用レーンの設置等走行環境の改善を中心に各々のバス路線の実情に合った施策を選択し,これらの施策を着実に実施していくことがなによりも必要である 〔2−3−5図〕

 (バス乗継ターミナルの整備)
  近年,地下鉄の整備が東京,大阪をはじめとして順次他の大都市にも進められており,このような地下鉄の整備に即応し,地下鉄とバスとの役割分担を明瞭にした効率的かつエネルギー節約的な都市交通体系を形成するため,運輸省では現在直接都心に乗入れている長大バス路線を最寄りの地下鉄拠点駅に短絡させ,地下鉄には幹線輸送を,バスには支線輸送をそれぞれ分担させるとともに,地下鉄線の間隙部分についてはバス路線を幹線と支線に区分し,または必要に応じ中量軌道システムに幹線輸送を,バスには支線輸送をそれぞれ分担させることによりバス運行の合理化,効率化を図っている。このようなバス路線の再編成を可能ならしめるため,バス路線の再編成により地下鉄とバス,バスまたは中量軌道システムとバスの接点となる箇所にバス乗継ターミナルの整備を行う地方公共団体に対して助成措置を講じている。
  また,適正な運賃水準,事業者の収支状況等を勘案しつつ乗継運賃制度を導入し,異なる交通機関間の乗継ぎの際の運賃併算による割高感を解消する等により,移動の連続性を確保し,利用しやすい公共交通ネットワークの形成を進めていく必要がある。
 (深夜輸送力の確保-終バス時間の延長,深夜バス,乗合タクシー)
  また,都市における活動時間の延長に伴い深夜における住宅団地と鉄道駅の間の輸送需要が増大しており,これに対応した輸送力を増強することが必要となっている。
  このため,相当程度の定型的輸送需要がある場合において,まず,終バス時間を延長することにより対処することとしているが,23時以降,これに通常の路線バスの運行時間を延長させることにより対処することがコスト等の面で困難な場合には,コストアップを吸収しうるよう運賃を割増して深夜バスとして運行するよう指導してきており,59年8月現在,このような深夜バスは,東京都,千葉県,埼玉県,神奈川県,愛知県の5都県において71系統で運行されている。
  なお,これらのバス輸送の実施が困難であり,かつ,終バス後一定量の定型的輸送需要が存する区間においては,タクシーの相乗りを制度化した乗合タクシーの運行を行うよう指導してきており,59年8月現在,このような乗合タクシーは,東京都,千葉県,埼玉県,神奈川県,愛知県,大阪府,京都府,奈良県,兵庫県の9都府県において59系統で運行されている。


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