3 国鉄特定地方交通線の転換
(国鉄特定地方交通線はバスヘの転換が原則)
国鉄特定地方交通線対策は,現在,国家的な課題となっている国鉄再建問題を解決するための重要な柱の一つである。このため,国は,国鉄特定地方交通線の転換を円滑に進めるための交付金制度や転換後に赤字を生じた場合の補填制度を設け,線区ごとに関係者と協議しつつ具体的な転換を進めている。
国鉄特定地方交通線対策は,国民経済的にみてもはや鉄道としての輸送特性を発揮することが困難な分野となっている路線を廃止し,これに代えて地域住民の生活の足を確保するとともに輸送需要に見合った効率的な輸送手段を確保・整備するものであるので,基本的にはバス輸送への転換が望ましいものと考えられる。第1次選定線区では,59年10月現在,北海道の白糠線等5線がバス輸送に転換され,さらに兵庫県の高砂線等10線がバス輸送に転換する方向で合意されている。
(根強い鉄道存続への動き)
一方,このような国鉄特定地方交通線対策の実施に当たっては,鉄道としての存続を図りたいという地元の要望にも根強いものがあり,なかでも第三セクターによる民営鉄道への転換の動きが注目される。これは同線を地元の関係地方公共団体,民間会社等が共同出資する第三セクターにより運営される民営鉄道として維持,存続させようとするものであり,公的要請の強い事業の遂行に民間企業的な効率的な運営方式を取り入れようとするものである。
第三セクター化を最初に行ったのが,岩手県の三陸鉄道株式会社である。同線は,特定地方交通線である久慈,宮古及び盛の3線と鉄建公団の建設線を合わせて59年4月に開業されたもので, 〔2−4−3図〕のとおり,北リアス線及び南リアス線を合わせて107.6キロメートルと,民営鉄道の中では有数の長距離鉄道として開業し,それまで交通の便が途切れがちであった三陸地方を鉄道が縦貫することにより,地域住民の足としてはもちろんのこと,沿岸各地を結ぶ旅客輸送路線として,さらには観光の足としての役割を担い,地元産業の発展にも資することが期待されている 〔2−4−4表〕。
また,三陸鉄道に続く第三セクター化による民営鉄道への転換路線としては,59年10月1日に開業した富山,岐阜両県にまたがる神岡鉄道(株)と同年10月6日に開業した岐阜県の樽見鉄道(株)の2線が挙げられる。これらの2線は貨物輸送が主体であり,経営も民間企業が主体となっている。
このほか,国鉄の新線として建設が進められてきた鹿島線についても,国鉄,茨城県及び鹿島臨海工業地帯立地企業が出資する第三セクターである鹿島臨海鉄道(株)により運営が行われることになり,59年9月11日,地方鉄道の免許を行った。
このように,第三セクター化を選択すること等により鉄道の存続を図っていこうとする場合には,そもそも鉄道経営の難しい路線において,あえて民営による鉄道を経営するということを関係者が十分認識したうえで,事業の採算性等についても事前に十分な検討を行い,国鉄線にかわる地域住民の足の確保という本来の目的を達成するためにも,地方公共団体をはじめとして,様々な方面からの積極的な参画が行われることにより,所要の施策を講じ第三セクター化された地方鉄道の経営維持がなされていくことが望まれる。
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