2 国民の観光レクリエーションの充実


(1) 観光地の活性化

 (観光地活性化への取組み)
  観光レクリエーションの国民生活に果たす役割が,物質的豊かさより精神的豊かさを求める傾向を背景としてますます大きくなっている中 〔4-4-4図〕,観光レクリエーション活動の内容も健康志向,スポーツ志向,文化志向の高まりや家族旅行,小グループ旅行の増加等にみられるように質的な変化を示している。

  このような中で観光地の動向をみると,スポーツ等野外活動施設の整備を進めるなど観光レクリエーション需要の質的変化に対応した観光地が脚光を浴びているのに対して,温泉地等の既存観光地は観光客の入込に停滞,減少傾向がみられる。
  このため,地方においては,各種イベントの開催,郷土景観の整備,地場産業の活用等により観光地の活性化に取り組んでいるが,運輸省としても,このような各地での動きを踏まえて,国民の観光レクリエーションの充実を図るため,観光地活性化のための観光地作りの手法の研究(観光動向の時系列分析,ライフステージ別分析,観光行政の役割,観光資源の創造と再発見等),観光地振興に係るモデル調査(観光基盤の充実による観光振興方策,観光需要の質的変化に対応した観光振興方策等),入込観光者統計の統一化(入込観光者統計のマニュアル化,研修会の実施等)等を行っている。
  また,本年7月地方運輸局に企画部が設置されたことを契機として,地方公共団体の枠を越えた広域的な観光行政を推進することとしている。

(2) 観光レクリエーション地区の整備

 (進む家族旅行村の整備)
  国民の健全な観光レクリエーション活動の場を確保するため,従来より公営ユースホステル(75か所),青少年旅行村(80か所),大規模な観光レクリエーション地区(4か所),家族旅行村(整備済10か所,整備中16か所)の整備を進めてきている。このなかで現在鋭意整備を進めている家族旅行村は,家族が恵まれた自然のなかで手軽な観光レクリエーション活動を行える場を確保することを目的としており,58年度の利用者数は,供用地区7か所の合計で138万人となっている。
  59年度は,青森県東八甲田地区,長野県飯綱東山麓地区,徳島県阿南海岸地区(大規模),愛媛県久万高原地区の4地区が供用を開始したところであるが,家族旅行村については,広く国民に親しまれている施設であるので,今後とも,各地域の実情に応じた施設づくりを推進していくこととしている 〔4-4-5図〕

(3) 情報システム化の推進

 ア 観光情報システムの整備

     (重要さを増す情報化)
      国民の観光レクリエーション活動の多様化に伴う観光情報に関する要請を受けて,広範かつ詳細な観光情報を一元的に収集・管理し,迅速に国民に提供するため(社)日本観光協会を運営主体として,東京及び大阪の観光情報センターと地方中核都市47か所の地方観光情報センターを結ぶ情報提供体制を整備しており,59年度より情報処理の電算化に着手した。
      また,国民の情報化の要請に対応するため,動態観光情報システムのあり方を検討するための基礎資料を得ることを目的として,58年夏の海水浴,58年冬のスキー・スケートについて観光情報システム(波の高さや積雪量など日々変化する情報を電話により回答する業務方式)を試験的に実施するとともに,システムの効果等を把握するための調査を実施した。さらに59年夏においては,海水浴情報のほかに登山情報及び観光レクリエーション情報を加えるなど提供情報の内容を拡充して同システムを運用実施した。これらの各サービスの結果を踏まえ,今後とも動態観光情報システムの整備を進める等観光情報システムの質的充実を図ることとしている。

 イ ホテル業における情報提供システム

      都市機能の複雑化,活発化に対応して,宿泊のみならず情報交換の場としてのホテルの役割は,近年ますます重要となってきている。 こうした状況の中にあって,都市ホテルは,予約・受付・精算事務処理の電算化,自動化等経営全般にわたる合理化と新規業務の開拓による利便の一層の向上を図っている。特に利用者に対しては,客室及びロビー等に有線テレビを設置する等してホテル内の各種情報をはじめ,地域の観光情報等の利用者のニーズに応えた情報提供を行う動きがみられ,今後,更にシステムの高度化によりそのサービス内容は一層多様化することが予想される。

(4) 観光資源の保護

 (観光資源保護の体制)
  国民の観光レクリエーション活動の推進を図っていくうえで,忘れてはならないのは観光資源の重要性である。
  しかしながら,観光資源は常にその保存及び適正な利用に配慮を加えていかないと損耗によりその復元は不可能となる。
  このため,運輸省としても財団法人日本観光資源保護財団の指導等を通じ,奈良の大乗院庭園,長野の大平宿等をはじめとする各地の歴史的町並み,史跡・旧跡等の保護を図っているが,今後は更に一層,観光資源の保護のための体制整備を進めることとしている。


表紙へ戻る 次へ進む