3 快適で安全な旅行の実現


(1) 旅行業界の概要

  旅行業者の全取扱額は順調に伸びてきており,57年で旅行業は3兆6千億円産業となっている。59年1月現在,一般旅行業者485業者,国内旅行業者5,074業者で,旅行業代理店業者を含めると7,300業者となっている。

(2) 旅行者保護のための諸施策

 ア 旅行トラブル防止運動の実施

      改正旅行業法は58年4月から施行されたが,施行後も@主催旅行に関するトラブルが絶えないこと,A無登録業者による被害が出ていること,B主催旅行広告について不適切なものがあること,C登録票・約款等の掲示に不適切なものがあること等の事態も一部で生じているため,58年12月に警察庁,都道府県,旅行業協会等の協力を得て,旅行トラブル防止運動を展開し,@立入検査等旅行業法遵守状況の総点検,A無登録業者に対する監視体制の整備,B旅行者に対し旅行取引にあたって登録業者を使うこと等の呼びかけを行った。

 イ 海外旅行に係る事故対策

      59年9月にパキスタン及び韓国で日本人観光旅行者の交通事故による人身事故が発生した。当面この種の事故の再発防止のために海外旅行の安全に関する事項についてなお一層の注意を喚起するよう旅行業界を指導した。

(3) 旅行業をめぐる新たな動き

 ア 高度情報化社会の進展と旅行業

      近年,ニューメディアの発達等による情報化の進展にはめざましいものがあり,旅行業が典型的な情報産業であることから,情報化社会の進展は旅行業の事業の内容,運営や旅行業界の構造に影響を与えるのみならず,他の運輸産業や宿泊産業,さらにはその他の産業とのいわば業際間の変化をも引き起こす可能性がある。そこで59年度において,「高度情報化社会が旅行業に与える影響」についての検討を行っているところである。
      また,中小旅行業者が旅行業務に最適で安価なコンピュータ・ソフトウエアが入手できるようにするため,運輸省の指導により(社)日本旅行業協会を中心として,旅行業用コンピュータ・ソフトウエアの開発を行っている。

 イ クレジット社会の進展と旅行業

      旅行業界における消費者信用取引は,58年において約680億円と推計され,これは旅行業者の全取引額の約1.8%にあたる額であるが,今後その割合は増大すると見込まれる 〔4−4−6図〕

      旅行業法は,こうした消費者信用取引にも対応できるよう,取引条件の説明,旅行書面の交付,標準旅行業約款,苦情処理等の制度を既に整備しており,消費者信用取引に関するトラブルは今のところ生じていないが,今後,消費者信用取引の進展が予想されるため,必要に応じて適切な措置を検討していくこととしている。


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