2 収支状況
(増え続ける欠損額と長期債務)
以上のような輸送需要の動向の中で,国鉄の経営は39年度に単年度赤字を生じて以来,輸送量の伸び悩みと運賃値上げの遅れ等から収入の増加が得られず,一方でこれに対応する経費の縮減が図れなかったことから,各年度の欠損額は次第に増加し,41年度に利益積立金取崩し後繰越欠損を生じ,46年度には償却前赤字を生ずるに至った。さらに48年末に生じた石油危機による諸物価と人件費の大幅な上昇は,収支を大きく悪化させ,このため50年度には欠損額が9,000億円を超えるとともに同年度末の累積赤字は3兆円を超える事態となった。その後においても,51年度及び55年度に債務の一部棚上げ等の措置が講じられたにもかかわらず,長期債務の利子の負担増のほか,国鉄職員の年齢構成の歪みから生じる退職金・年金負担の増大が近年に至って顕在化したこと等もあって,経費節減のための各種施策が講じられているものの,毎年度の欠損額はこの数年1兆円を超えている。
58年度においては,収入は,前年度に比べ,貨物収入が378億円減少したが,旅客収入が382億円,資産売却収入が954億円増加したため,841億円増の3兆4,902億円となった。一方,経費は,一般人件費が要員縮減等によって620億円減少したものの,退職金・共済年金が1,187億円増加したことに加え,利子及び債務取扱諸費が1,797億円増加したこと等により,3,667億円増の5兆1,506億円となった結果,純損失は2,826億円増の1兆6,604億円にのぼった 〔5−1−3表〕。
この結果,58年度末の累積赤字は,10兆6,250億円に,また長期債務残高は19兆9,833億円にのぼっている。
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