2 海洋汚染防止対策
(1) 海洋汚染防止対策
(海洋汚染防止と監視取締り)
海洋汚染の発生件数は近年横ばい傾向にあるものの,なお年間1,000件を超える汚染が発生している。
海洋汚染の未然防止対策としては海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(海防法)を中心に船舶からの油及び廃棄物の排出規制,船舶の構造設備に関する技術基準の設定とこれへの適合性を確保するための検査の実施等を行っている。また,船舶から発生する廃油を処理する廃油処理施設についてもその整備を図ってきており,特に58年10月の海防法改正に伴い廃軽質油の受入体制が整備された。さらに海洋汚染防止思想の普及及び関係法令の周知徹底を図るための諸施策を講じてきている。
また,海上保安庁においては,海洋汚染発生のがい然性の高い海域を重点として航空機と巡視船艇を連携させた監視取締り等を実施し,海防法,水質汚濁防止法等海上公害関係法令違反の摘発を行っているほか,公海上での外国船舶による油の不法排出については,国際条約に基づき当該船舶の旗国に対し,違反事実の通報を行っている。
(港湾などにおいて有効な浚渫などの浄化対策)
浄化対策として,堆積汚泥の浚渫,覆土等の公害防止対策事業を実施するとともに,東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海においてごみ,油の回収事業を実施した。さらに,富栄養化の進んだ閉鎖性海域では海洋環境を抜本的に改善することが社会的に強く要請されていることから海底に広く堆積している有機汚泥の除去等による底質浄化に係る実施設計調査を東京湾,伊勢湾,大阪湾等において行った。
(2) 国際的な動きへの対応
(厳しくなる海洋汚染に関する規制)
海洋汚染の防止については,従来より国際条約に対応して,規制基準の強化等を図ってきているが,新たな条約である「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書」の本文及び油に関する規則の発効に伴い58年10月より規制を強化したところである。
さらに,ばら積みの有害液体物質に関しては61年10月より規制が実施される見込みとなっており,現在,国際海事機関(IMO)の場等において有害液体物質のリスト,その排出基準,船舶の構造・設備基準等について検討が行われている。我が国としては,これらの検討作業に積極的に参画し,海洋汚染の防止に関する国際的な動向に的確に対応していく必要がある。
また,現在発効要件を充足していないためその実施が今後の課題となっている容器等に収納して輸送される有害物質,汚水及び廃物に関する規則については,その早期発効を呼びかけるとともに,各附属書の実施のための国内体制の整備を行う必要がある。
(油による汚染損害に係る二条約の改正)
59年5月IMO本部で開かれた国際会議でタンカーによる油濁損害の被害者の救済等について定めた「油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(1969年)」及び「油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約(1971年)」の改正議定書が採択された。同議定書の主な改正点は,@船舶所有者の責任限度額及び国際油濁補償基金の補償限度額の引上げ,A空船タンカー,排他的経済水域への適用対象の拡大等であり,これに対する我が国の対応方を検討している。
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