3 海洋汚染防止対策


(1) 海洋汚染防止対策

  (海洋汚染の状況)
  海洋汚染の発生確認件数は近年減少傾向にあり,60年においては871件と,59年の981件より更に減少した。また,海水及び海底堆積物中の油分等による汚染の進行は認められず,廃油ボールの漂流・漂着状況は南西諸島海域ではなお他の海域に比べ漂着が多く認められるものの,全体として減少傾向を示している。なお,プラスチック等の海面浮遊物は,緩やかであるが増加傾向にある。
  (未然防止対策)
  海洋汚染の未然防止対策としては,「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」(以下「海防法」という。)を中心に船舶からの油及び廃棄物の排出規制,船舶の構造設備に関する技術基準の設定とこれへの適合性を確保するための検査の実施等を行っている。また,船舶から発生する廃油を処理する廃油処理施設についてもその整備を図ってきている(61年4月現在では142施設)。
  さらに,海洋汚染防止思想の普及・啓蒙及び関係法令の周知徹底を図るため,海洋汚染防止講習会,漏油事故防止指導等の諸施策を講じている。
  (浄化対策)
  港湾区域内の海域においては堆積汚泥の浚渫,覆土等の港湾公害防止対策事業を17港湾において補助事業として実施するとともに,港湾区域外の一般海域では東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海において,ごみ・油回収事業を直轄事業として実施した。さらに,閉鎖性が高く富栄養化の進んだ内湾海域の水質環境の改善を自的として,海底に広く堆積している有機汚泥の浚渫,覆砂等による底質浄化に関する実施設計調査を東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海において実施した。
  (監視取締り)
  海上保安庁においては,海洋汚染発生のがい然性の高い海域を重点として航空機と巡視船艇を連携させた監視取締りを実施しており,60年には1,812件の海上公害関係法令違反を送致した。また,公海上での外国船舶による油の不法排出については,国際条約に基づき当該船舶の旗国に対し違反事実の通報を行っており,60年には25件の通報を行った。

(2) 国際的な動きへの対応

  (強化される海洋汚染に関する規制)
 「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書」のうち,本文及び油に関する規則が発効したことに伴い,

 58年10月より油に関する規制を強化したところであるが,同条約のうち,ばら積みの有害液体物質に関する規則についても62年4月から実施される予定であり,現在,規制内容の周知徹底等この規則の実施のための準備を進めている。また,同条約のうち,現在発効要件を充足していない容器入有害物質,汚水及び廃物に関する規則についても,その早期発効のための努力が続けられており,我が国としては,こうした国際的な動向に的確に対応し,今後とも,海洋汚染防止の一層の推進を図る必要がある。
  なお,同条約の実施のために58年に海防法の一部改正を行ったが,その後,同条約の各附属書の実施時期の一部変更,規制内容の一部改正という事情の変更があったため,61年5月に所要の法律改正を行ったところである。
  (油濁二条約及び民間協定の改正)
  タンカーによる油濁損害の被害者の救済等については,1969年の「油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約」及び1971年の「油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約」により定められているが,両条約の改正議定書が59年5月に採択された。両議定雷の主な改正点は,船舶所有者の責任限度額及び国際油濁補償基金の補償限度額の引上げ,空船タンカー及び排他的経済水域への適用範囲の拡大等であり,60年11月30日の署名開放期間終了までに米,英,西独,仏等12か国が両議定書に対する署名を行ったが,我が国は,なお慎重な検討が必要との判断から,署名は見送った。
  また,両議定書の採択を受けて,関連する民間協定についても60年5月に見直しが行われたが,関係者の十分な支持を得られなかった。このため,現在,関係者間で更に検討が進められている。
  このような状況を受け,運輸省では,諸外国の対応状況,関係業界の動向,民間協定の改正の動き等を踏まえつつ,上記議定書への対応をなお検討していくこととしている。


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